地方物件は本当に高利回り?気をつけるべき投資のタイミングと融資事情。

※2019年7月更新

地方物件は都心に比べて賃料水準は低いですが、それ以上に地価水準が低い分、高利回りであるという性質を持っています。

ただしその分物件のエリア等を十分吟味しなければ、そもそも入居者がつかずに高い空室率を抱えてしまい、高い利回り(満室想定)が絵に描いた餅になりかねません。また売却の際も高く売れるかどうかは不安が残ります。

そこで今回こちらの記事では、地方物件の特性(高利回りでどんな点が投資向きなのか?)、そして理想的と考えられる売り方についてお話しします。

 

地方物件は高利回りな点が注目される

平成24年末からのアベノミクスに始まり、また日銀の金融緩和政策が拡大・継続していることを受けて、法人・個人問わず不動産投資家の資金調達環境は良好な状態が続いています。

低金利で融資を受けられること、銀行も融資を出したいというのが基本姿勢になっており融資が通りやすくなっていることがその要因です。

その一方で、不動産の数は限られていますから、人気の高い都心部では買い希望が集中した結果収益物件の価格が上昇し、利回りは極端に低下しています。

銀座の中心部の商業ビルでは表面利回り3%前後、東京23区外周部の一棟ものアパートでも表面利回り5~6%という低い利回りの物件ビラが並ぶこともざらになっています。

その一方で、地方物件についてもやはり利回りは低下傾向にはありますが、東京都心部と比較すると高い利回り水準になっており、表面利回りが10%前後の物件が多く、小規模な都市であればまだ表面利回り10%台後半を維持している物件もあります。

そのため、投資先として地方都市をターゲットにする投資家も増えてきています。

ただし高利回りであるということはその反面、リスクが高いということでもあります。

地方都市で気を付けなければならないのは、物件を十分に吟味しておかなければそもそも入居希望者が少なく空室率が高くなってしまうこと、売却時に安くしか売れず、投資資金の回収が不十分になってしまうことです。

そのため、地方物件を購入するに当たっては都心部の物件以上に注意して利回りと空室率・売却可能性のバランスを考える必要があります。

 

地方物件の投資のタイミング/見るべきポイントとは?

経験上、地方物件の価格の変動は都心部に比べると緩やかです。

都心部では好景気時には需要が一気に集中して年率20~30%程度等といったように極端に価格が上がる傾向がある半面、不景気時には多くの物件が一気に手放される傾向があり、やはり年率マイナス20~30%等の価格低下といったように、ダイナミックに価格が変動する傾向があります。

その一方で地方部では、好景気時の上り幅も5%前後程度と小幅、不景気時の下がり幅も同様といった傾向が一般的。(尚、地方部でも例えば再開発が近辺であった、大学が進出した、新駅が設置された等の特殊な場合はこの限りではありません)

また、地方物件では大きな経済変動は災害等の大きな事件があると取引が極端に少なくなる(買いが入らない)時期があるという特徴もあります。

例えば平成20年8月のリーマンショック後の1~2年間や、東日本大震災直後の数ヶ月といった極端な混乱時期は、地方物件が成約に至る件数は極端に減少しました。それも取引総額が大きい物件ほどそのような傾向が認められました。

その一方、地方部では好景気時には価格面で都心の物件を買えなくなった、又は利回りの面で満足できる物件が都心にない等の理由で都心部を中心に投資している投資家が地方物件を買うようになりますから、取引件数は増加します。

以上から、地方物件は都心の物件に比べて「価格変動幅は緩やか、好景気時でなければ買い希望者が極めて少なくなる」という傾向があると言えます。

つまり、地方物件を売るタイミングは買い希望者がつきやすい好景気の時に売るのが基本であると言えるでしょう。

 

地方物件の売却の際、ターゲットはどう考えるべきか

地方物件を売却する場合、ターゲットは地元の投資家と都心部の投資家双方であると考えるべきです。都心部の投資家の方が絶対数が多いですから、それだけ売却する機会が増えます。

ただし、物件によっては都心の投資家が全く興味を示さない場合もあります。

東日本大震災直後は原発事故の風評被害等もあって、被災地に近い物件については避難区域に入っていなくても都心の投資家が敬遠したため長期間売れないというケースもあったようです。

このような事故の場合、地元と都心とでは災害や事故に関する情報の格差がありますし、何と言っても現地を気軽に確認できるかどうかという点で投資家の行動にも差が出ます。

こういったケースの場合で、多くの場合買いに入っているのはよく地元のことを知っている地元投資家です。

そのため、都心部・地方部両方の投資家に対してアプローチしていくことが良いと言えるでしょう。
地元の地方銀行や信用金庫といった、地元情報に精通している金融機関と良好な関係を持っている仲介業者を通じて販売を行う等の方法を取れば、このような販売戦略を採ることができます。

 

今は厳しい?地方物件の融資事情

シェアハウスの問題でスルガ銀行が、不正融資の問題で東日本銀行が指導を受けたのは記憶に新しいところです。

これらの事件の影響を受けて、地方銀行を中心に融資審査を厳しく行う等、融資の引き締めに入っているケースが多くなっているようです。

都心の物件は物件価格自体がまだ上昇し続けているため、投資家は将来の値上がり期待もあってまだ買いに入っている状況なのですが、地方物件に関しては融資の引き締めにより価格が下がり始めているケースも散見されています。

もちろん地方と言っても広範囲ですから地域差もあるのですが、三大都市圏を除けばここ数年価格上昇してきた地域でも物件価格の上昇はやや鈍化している傾向があるようです。

不動産投資については物件を売るまで値下がり損は確定しませんから、現在地方物件をお持ちの方で、今売ったとしたら満足できる価格にならないかもしれないと不安のある方は、仲介業者や金融機関、他の投資家にヒアリングする等して、実現可能な売却価格へのアンテナを高くしておいた方が良いかもしれません。

 

地方物件は本当に高利回り?気をつけるべき投資のタイミングと融資事情。まとめ

  • 地方物件は都心物件に比べて「高利回り・価格変動は緩やか」という傾向がある
  • 地方物件は不景気時にはそもそも買い希望が入らないということもあるので売却タイミングは好景気時が基本
  • 売却ターゲットは都心の投資家・地元の投資家両方と考える
  • 平成30年7月現在は融資引き締め傾向があるため、売却価格には注意したい