【隠されたデメリット】所有している空き家…結局どうするのが一番良いの?

2019年8月更新

大都市郊外の空き家の増加が目立っています。以前は郊外の土地面積の広い住宅が様々な面から好まれていたのですが、現在はそうではなくなっています。

また、2017年の税制改正において、こういった空き家を放置しておくと実質的に増税されてしまう懸念も生じています。

そこで今回は都市郊外の空き家の特徴を追っていきながら、最大限利益化する方法についてお教えします。

 

なぜ郊外に空き家が増えたのか

東京圏では埼玉県と千葉県の郊外部に特に空き家が多いと言われています。

これは、バブル期に東京圏の中心である東京都の地価が上昇しすぎて、東京都内にマイホームを購入できる人が少なくなり、人口が外周の千葉県や埼玉県、神奈川県等に流出したことが原因です。

バブル最盛期はドーナツ化現象といい、東京都内に住んでいる人が極端に少なくなるという現象がありました。その時期、郊外部に大規模な住宅団地を造成してこれら東京都から流出した需要者を取り込んで販売された住宅地が多く残っています。

その後、バブルがはじけて都心の地価が下落して、都内に家を購入できる人が増えたこと、通勤等の利便性がより重視されるようになったことから、現在は「都心回帰現象」といい、人口が都心に戻ってくるようになりました

これにプラスして、バブル期に郊外に住宅地を購入した方々が高齢になられていることや、相続によって空き家を取得した方が都心部に住んでおり実際には郊外の家には住んでいないこと、日本が人口減少局面に入っていることもあって、郊外に空き家が増加しているという状況になっているのです。

実際総務省の調査によると空き家率は約14%前後という調査結果になっており、過去最高水準となっています。

空き家は別荘や貸住宅等に転用が進められていますが、十分に進んでいるとは言えません。野村総合研究所の調査によると、転用が十分に進まなかった場合、20年後には空き家率は30%を超えると推計されています。

こういった誰も住んでいない空き家は、廃墟となって美観を損ねること、ゴミが不法投棄されること、不法侵入者によって犯罪の温床とされかねないことといった問題があります。また、建物が老朽化していつ自然崩落してもおかしくない状況になってしまえば危険でもあります。
最終的に建物の撤去等の空き家対策を自治体がすることになった場合、自治体の負担は非常に大きくなり、周辺住民に大きな不利益をもたらします。

そのため、国や自治体は空き家対策に乗り出しているわけですが、空き家を相続する等して所有はしているものの、放置している所有者の側からみると大きなマイナスになる可能性が高まっています。

 

所有するだけでこんなに!?空き家のデメリットとは?

空き家所有のデメリット1 『固定資産税』

空き家に限らず不動産は所有しているだけで費用がかかります。特に空き家に関しては固定資産税や都市計画税の割合が大きいです。固定資産税や都市計画税は、放置している場合でもかかる税金ですから、毎年支払わなければなりません。

住宅用地の固定資産税は基本的に1/6に減税されていますが、空き家の場合、市町村が特定空き家と認定するとその減税は受けられなくなります。

 

空き家の固定資産税計算

簡単な例をあげましょう。固定資産税は課税標準額×税率で税額が計算されます。これを住宅地の減税がある場合、ない場合に分けて考えてみます。課税標準額はキリの良い数字で1千万円、固定資産税率は1.4%とします。

〈住宅地の減税がある場合〉
1千万円×1/6×1.4%=23,333円

〈住宅地の減税がない場合〉
1千万円×1.4%=140,000円

特定空き家に認定されると、以上の通り固定資産税額が約6倍になってしまうのです。

 

空き家所有のデメリット2 『広大地の場合の相続税額』

その他、特に広い土地を所有している場合ですが、放置し続けた場合相続税がかかるということがあります。

相続税は固定資産税・都市計画税と比べても税額が大きくなります。更に、これまでは東京・大阪・名古屋の三大都市圏においては相続税の際の広大地減価という制度が設けられていましたが、2017年度税制改正大綱においては、この広大地減価がすべて削除され、地域規模の大きな宅地の評価が新設されることとなっています。※2018年1月1日以降に相続が発生した土地については、この内容で改正される見込みです。

この「地域規模の大きな宅地の評価」は、これまでの広大地減価と比較すると実質的な増税であると言われています。やや専門的になりますが、これまでの広大地の補正率と、これからの地域規模の大きな宅地の評価の補正率を見てみましょう。

 

三大都市圏の広大地減価と地域規模の大きな宅地評価の補正率比較

土地の規模 広大地補正率 地域規模の大きな
宅地評価補正率
500㎡ 0.575 0.8 +0.225
1,000㎡まで 0.55 0.78 +0.23
3,000㎡まで 0.45 0.74 +0.29
5,000㎡まで 0.35 0.71 +0.36

※規模による補正以外の補正は一切行わない場合の数値

以上のとおり、規模が大きくなればなるほどこれまでの広大地補正率との格差が大きくなる、つまり実質的な増税幅が大きくなっています。500㎡の土地では22.5%の増税効果ですが、5,000㎡の土地になれば36%もの増税効果となっています。

特にバブル期前後に東京圏郊外で販売された住宅は、土地の規模がかなり大きいものもありますので、将来の相続に備えてこの点は注意しておかなければなりません。

 

所有している空き家を最大限利益化する方法とは?

現在使っておらず、将来も使う予定のない空き家を所有していることは、デメリットが大きいということを説明してきました。それでは、こういう空き家を所有している場合どうすればよいのでしょうか?

単純に言えば「売れるときに売ってしまった方が良い」というのが答えです。

売り時や販売額については地元に精通している不動産業者に個別に相談するしかありませんが、国や地方公共団体の方でも固定資産税・都市計画税の増税や相続税の実質増税といった、放置されている空き家を厳しく取り締まる政策の他に、空き家の売却をしやすくする措置を導入しています。

その大きなものが、空き家を売却した際の譲渡所得の特別控除です。不動産を売却する場合はその譲渡益について税金がかかりますが、その譲渡益が3,000万円まで(ただし相続から3年以内に限る点には注意してください)については非課税にしますということです。

この制度は元々自分が実際に住んでいる自宅の売却時には使えた制度ですが、空き家は対象外でした。それを対象とすることで、空き家対策につなげようというものです。そのため、やや乱暴な言い方をすると売れるものは売ってしまった方が良いと言えます。

しかし、空き家はそもそも「住もうと思う人が少ない」から空き家になっているという面があります。そのため、売りたくても誰も買いたい人がいなくて売れないということも考えられます。

空き家については役所も所有するだけで費用/管理の負担もあるということを理解しています。立地条件が悪かったり建物が老朽化していたりすると、空き家を役所に寄付しようとしても断られてしまうケースも多いです。

こういう場合は、建物を取り壊して更地にした上で、役所に無償寄付してしまうことも最悪考えなければいけません。建物の取り壊し費用分は負担しなければなりませんが、毎年の固定資産税の増加のリスクや将来の相続税リスクを考え合わせた上で判断する必要があると言えます。

 

【隠されたデメリット】所有している空き家…結局どうするのが一番良いの?まとめ

  • 人口の都心回帰によってバブル期を中心に建てられた郊外の住宅で空き家が増加しつつある
  • 空き家は所有しているだけで修繕費や固定資産税の費用がかかる
  • 市町村に特定空き家と認定されると住宅地の固定資産税・都市計画税減税は受けられなくなる
  • 相続税法の改正によって、広い土地は相続税額が大きくなるリスクが高まっている
  • 使っていない空き家は早々に処分方法を考えるべき