低所得入居者のリスク〜家賃不払いが起きた時、契約解除ができない?

※2019年7月更新

日本も格差社会と呼ばれるようになっています。大卒初任給はバブルの頃は手取り25万円程度と言われていましたが、現在は手取り15万円程度等というのはざらです。また、昔のように年功序列で長く働けば給料も右肩上がりで上がっていく時代ではなくなっています。

不動産投資家の観点から見ると、低所得層の増加はそのまま家賃不払いリスクに直結しますから、十分注意しておかなければいけません。

 

低所得者を入居させるリスク

低所得者を入居させると、まず考えられることは家賃の不払いリスクです。

もちろん、入居時審査で設定家賃に見合わない収入の方はお断りするケースがほとんどだと思いますし、入居時審査をより厳格に行うことでこのリスクはある程度防げます。

しかし、入居後に低所得者になってしまったようなケースは分かりにくいため、家賃不払いがあって初めて判明するようなケースも多いでしょう。入居者は入居審査時に収入を申告するケースがほとんどですが、一度入居してしまうとその後はオーナーに対して収入の申告が必要な場面はないからです。

では家賃不払いが生じるといったいどんなことが起こるのでしょうか。

家賃不払いによって起こるリスクとは?

家賃不払いが起きると、オーナーとしては当然滞納分の家賃の請求をすることが考えられます。しかし、そもそも家賃を払えるだけの収入や預金がないのですから、すんなりと払ってくれるとはあまり考えられませんよね。

仮に1回目の滞納分をすんなり払ってくれたとしても、家賃滞納に至るということはかなりギリギリの範囲で生活しているケースがほとんどですから、2回目、3回目と滞納が発生してだんだん払ってくれなくなるということになるケースが多いです。

滞納や家賃支払いの遅れがオーナーの許容範囲を超えた場合、当然オーナーの考えることは賃貸借契約の解除・退去の請求です。家賃を払えないなら出ていってくれと言うわけです。

しかし、ここでオーナーにとっては大きな障害となる法律の問題があります。
「信頼関係破壊の原則」というものです。

 

『信頼関係破壊の原則』とは?

家賃の不払いは入居者の賃料支払義務という債務の不履行にあたりますから、民法の条文通りに解釈するのであればオーナーの方からの契約解除は可能な事由です。

しかし、信頼関係の破壊の原則という考え方を裁判所が取っているため、現実は一回二回の家賃滞納ではオーナーの方から契約を解除することはできなくなっています。

『賃貸借契約のような継続的な契約関係においては、売買契約のような一回的契約よりも高度な当事者間の信頼関係を基礎としていると解すべきである。そのため、賃貸借契約の解除が認められるためには、単に債務不履行があったというだけでは足りず、「当事者の信頼関係を破壊するといえるような事情」がなければならない』実際の判例をかいつまんで言うと以上のとおりです。

家賃滞納を理由に賃貸借契約を解除して入居者に出ていってくれというためには、家賃滞納の状況等について、賃貸人・賃借人間の信頼関係を破壊したと言えるだけの事情が必要というわけです。

実際に裁判や調停になった場合はケースバイケースで対応されているようですが、大体の目安として「賃料の3か月分の滞納」が信頼関係が破壊されたと考える目安になっているようです。オーナーにとってはかなり不利な判例ですから、この点からも十分に注意しておく必要があるでしょう。

 

また、家賃の滞納があったとしてもその間入居者は部屋を使い続けます。ということは、部屋の内装や設備は経年劣化しますし、最悪の場合は経年劣化以上の傷があることもあるでしょう。

通常、経年劣化以上の汚損に関しては入居者の費用負担となり、補修分を払ってもらえるはずですが、その補修分を払う余力すらない入居者の場合はオーナーの泣き寝入りともなりかねません。

 

低所得者を入居させる際の対策

低所得者を入居させる際は、古典的な対策としては保証人をつけてもらうことでしょう。

しかし、現代では保証人は昔ほどの価値があるものではなくなっています。家族関係が希薄化してモラルも低下していますから、「払わなくて済むものなら払わない」と保証人が考えていたら問題の解決策としては弱いからです。

そのため、低所得者を入居させる際はできるだけ保証人に加えて保証会社をつけてもらうことが必要になります。

保証会社を利用されておられる投資家や管理会社は多いですが、保証会社が付いていれば家賃の滞納があったとしても保証会社が払ってくれます。その後、滞納分の家賃は保証会社が入居者へ請求することになりますから、リスクの転嫁ができるのです。

入居時審査についても保証会社が代行して行ってくれるようなものですから、安全性は高まると言えるでしょう。ワンルームマンションや単身者向けアパート等、入居者当たりの家賃が安い物件の場合、審査が比較的緩い保証会社をつけているケースが多いとは思いますが、オーナーの観点から見るとリスク回避の効果は同じです。

 

不動産投資初心者の方が避けるべきことは、空室を埋めたいばかりに保証会社の審査にすら通らない人をやたら入れてしまうことです。

前段の通り、家賃は滞納され、信頼関係破壊の原則によって退去してもらうまでに何か月もかかり、しかも経年以上の汚損分の原状回復費用もオーナーの負担になってしまうリスクまで背負う等、オーナーにとってのメリットは何もありません。

低所得入居者のリスク〜家賃不払いが起きた時、契約解除ができない?

  • 低所得者は入居時審査以外では分かりにくい
  • 家賃の滞納があっても信頼関係破壊の原則によって、即座に退去させられるわけではない
  • 場合によっては入居者が支払えないため入居者負担の原状回復費用までオーナーが泣き寝入りすることにもなりかねない
  • 保証会社をつけることで家賃滞納リスクを回避する

 

Slider