【残念】メガ大家だからといって儲かるとは限らない4つの理由

アベノミクス以降、特にマイナス金利政策が導入されてから、一部銀行で不動産投資を行う方にどんどん融資を行うようになり、ここ数年でメガ大家という言葉が聞かれるようになりました。

メガ大家とは、概ね合計資産が10億円以上の資産を保有している方のことを言います。

書店には資産拡大方法に関する本が平積みに並べられており、またネットにも同様の情報が多く書かれており、不動産投資を考えておられる方にとってはメガ大家は一見憧れの的かもしれません。

しかし、10億円以上もの資産を保有しているメガ大家の全てが、必ずしも利益を得ているとは限りません。

以下では、メガ大家だからと言って必ずしも儲かるとは限らない、資産規模の拡大が必ずしも利益につながるわけではない理由をお話しします。

不動産投資にはそれなりの経費がかかる

不動産投資、特に物件購入段階で投資家の方が良く目にする利回りはあくまで表面利回り(粗利回り)であって、単純に「年間家賃収入÷物件価格」で表される指標です。

しかし、不動産投資以外の事業でもそうですが、儲かっているかいないかを判断する指標はあくまで「純利益」で考える必要があります。

一般的に不動産投資における純利益、手残りキャッシュフローなどとも言われますが、この純利益率は物件価格の1%~3%程度と言われています。

不動産投資においては年間家賃収入の全額が自分で自由に使えるというわけではありません。

ここから、修繕費・維持管理費・水道光熱費・固定資産税や都市計画税などといった、不動産運営上の必要諸経費をまず控除する必要があります。

さらに、月々のローン返済も家賃収入から控除しなければなりません。

そして、最終的に不動産所得税もかかってきます。

【不動産投資の収益構造】

【収入】 【経費】 【利益】
家賃収入
(グロス収入)
純利益
ローン返済額 控除
修繕費
維持管理費
水道光熱費
公租公課
減価償却費
不動産所得税

上記は物件購入後、運営している期間中の収入・経費の構造を示したものですが、不動産は購入・売却の際にも仲介料、不動産登録税、登記費用等の費用がかかり、これは物件価格の大体8%と言われています。

そのため、たとえ数年後に買った時と同じ値段で不動産を売却したとしても、マイナスとなってしまう可能性もあります。

購入時、売却時の経費まで取り戻すためには、キャピタルゲインが得られないような場合はある程度の期間保有し続けなければなりません。

必ずしも、現在(平成29年7月現在)の都心部のように資産価値が上がり続けるという保証はないわけですから、キャピタルゲインが得られるかどうか、ほとんどの方には分からないというのが本音でしょう。

尚、上記の収入・経費の図において、太字で示した家賃収入・ローン返済額・減価償却費の3つについては、以下でそれぞれ説明します。

家賃収入が保証されたものではないこと

繰り返しになりますが、多くの不動産投資家の方が見ておられるのは、あくまで表面利回りです。、しかしながら、その表面利回りの元になる家賃収入も、完全に保証されたものではありません。

例えば空室が発生して、次のテナントがなかなか決まらないということになってしまえばその空室部分の賃料は得られませんから、実質的な利回りは下がってしまいます。

新たなテナントを探す手間や苦労はかなり煩雑なものになるため、大家さんの悩みの種でしょう。

また、特に店舗や事務所といった商業用建物であったような場合は、テナントも不動産の知識がある場合がほとんどですから、家賃の減額交渉を受けるような場合もあるでしょう。

このように家賃収入自体がある意味不確実であるため、空室発生リスクや家賃の変動リスクなどは織り込んでおかなければいけませんが、メガ大家関連の書籍でこの点がクローズアップされているものは少ないなと感じられます。

空室リスク、家賃収入の変動リスクを回避するためにサブリース業者に物件運営を委託すれば良いだろうと思われるかもしれませんが、その場合は確かに家賃保証は得られますが、満室想定の家賃収入・もしくは予想される平均稼働率を前提とした家賃収入から、10%~20%程度のフィーをサブリース業者に支払わなければならないでしょう。

そうすると、たとえ表面利回りが8%の物件であったとしても、8%×(1-10%~20%)=6.4%~7.2%程度まで利回りは下がってしまいます。

サブリースには収入を安定化できるというメリットはあるものの、純利益率は下がってしまうというデメリットもあります。

また、最悪の場合はサブリース業者から保証賃料の減額交渉をされるリスクすらある点は忘れてはいけません。

ローン返済について・保有している資産=必ずしも完全に自分のものではないこと

不動産投資には、自己資金だけではなく借入金をあわせて利用することが一般的です。

また、メガ大家のように10億円以上の資産を保有するためには、通常は借入金を併用しなければ不可能です。

ここで、会計の貸借対照表のイメージを考えてみましょう。

貸借対照表はバランスシートとも言われます。左側(借方と言います)に資産、右側(貸方と言います)に負債・純資産をそれぞれ記載し、貸方と借方の合計額は必ず一致します。

借方 貸方
資産の部 負債の部
財産をどのような形で持っているかを表示
返済の必要がある資金を表示
純資産の部
返済の必要がない資金を表示
10,000,000円 10,000,000円

上の例示に記載したとおり、借方には「財産をどのような形で持っているか」が表され、貸方には「その財産を獲得するためにどのような方法で資金を調達したか」が表されます。

そして、貸方は負債の部と純資産の部に分かれており、負債の部では「返済の必要があるお金(借入金)」、純資産の部では「返済の必要がないお金(自己資金)」が示されます。

前置きが長くなりましたが、一般的に保有資産額10億円を超えるようなメガ大家になるためには、自己資金(純資産)だけでは不可能ですから、不動産投資は借入金(負債)をあわせて行うことが一般的です。

ここで注意してほしいのは、このように借入金を併用して投資を行う場合、「資産が大きくなればなるほど負債も大きくなる」ということです。

不動産だけに絞って単純化し、貸借対照表のイメージで表してみると以下のようになるでしょう。

【通常のイメージ】

借方 貸方
資産の部 負債の部
保有不動産   1千万円
借入金      5百万円
純資産の部
自己資金     5百万円
10,000,000円 10,000,000円

 

【メガ大家のイメージ】

借方 貸方
資産の部 負債の部
保有不動産    10億円
借入金       8億円
純資産の部
自己資金      2億円
1,000,000,000円 1,000,000,000円

いかがでしょうか。とにかく保有資産額の拡大だけを求めた結果、貸借対照表の資産の部だけを見るならば確かに10億円の資産を達成していることになりますが、その資金調達の方法まで見てみると、上の例では8億円もの借入金を背負っていることになります。

つまり、メガ大家と言ってもその保有資産のかなりの割合(上の例では借入金8億円÷保有資産額10億円=80%)は完全に自分のものではないということになります。

多くの場合保有不動産の登記簿を見てみると、かなりの額の抵当権・根抵当権の設定がされており、返済が滞れば保有不動産を競売にかけられてしまうようなリスクも背負っているでしょう。

もちろんこのような場合でもローン返済額<家賃収入の状況を作り続けられるのであれば問題ないのですが、保有不動産が実際に生み出す家賃収入からかなりの部分が借入金の返済に充てられることになり、利益率が圧迫されるという面は否定できません。

減価償却はあくまで「課税を繰り延べている」だけであるということ

別の記事でお話ししましたが、減価償却は収益・費用構造の面、税務対策の面から言うと、「実際に支出を伴わない費用」のことですから、その分のキャッシュは手元に残したまま費用として計上でき、その分物件保有期間中の節税効果を得られるというメリットがあります。

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建物の減価償却のメカニズムを深く掘り下げよう

以下は1,000万円の建物を5年間で減価償却した場合のイメージです。

【①減価償却イメージ 単位:万円】

購入時 1年目 2年目 3年目 4年目 5年目
資産額 1,000 800 600 400 200 0
減価償却費 200 200 200 200 200 0
減価償却
累計額
0 200 400 600 800 1,000

1年目から4年目まで、毎年200万円を減価償却費として費用計上(実際にはお金は手元に残っています)することで、最初の建物の購入額1,000万円を5年間で取り戻しているという計算になります。

この減価償却費累計額は手元にキャッシュとして残りますから、次の物件購入資金として活用可能となりますし、期間中は減価償却費分費用を上積みして節税効果を得ることも可能です。

しかし、この建物を売却した場合、売買価格(時価)と簿価(減価償却後の資産額)の差額が生じれば、この売却益分は課税対象となりますから、実際のところ減価償却は物件の買い替えを行うまでといった長期的なスパンで見ると支払う税金額は同額となります。

また、減価償却とローンの関係には落とし穴があります。

減価償却費とローンの返済分に関しては会計上以下のような処理の違いがあります。

【②減価償却費とローン返済分の会計上の処理の違い】

現実にお金が出ていくか
経費として計上できるか
減価償却費 出ていかない
できる(節税対策になる)
元金返済分 出ていく
金利分のみ経費計上可(節税対策にならない)

①の例で言うと、当初は減価償却費各年200万円ずつを経費として計上し、この間は通常「減価償却費>元金返済分」となっているため支払う税金額を減らすことができますが、ローンの返済期間が減価償却期間より(①の例では5年以上だと)長いと、「元金返済分>減価償却費」となってしまいます。これを「デッドクロス」といいます。

ローンの元金返済分は減価償却費と異なり実際に手元からお金が出ていくのに、経費として計上できないために多額の税金を支払わなければならなくなってしまうわけです。

メガ大家は、特にフルローンやオーバーローンなどを受けていると、このデッドクロスの状況に陥りやすくなります。

多額の借入金を背負っているために、次々と次の物件を買って、トータルの減価償却費を大きくするよう努めなければならないという側面があるわけです。
(尚、当然次の物件購入には代金以外の購入費用がかかります)

纏め

いかがでしょうか。メガ大家とは言いますが、その方々の多くが資産規模も大きい代わりに負債規模も大きいことがご理解いただけましたでしょうか。

負債規模が大きくても、不動産収入の範囲内で返済計画もしっかりしているのであれば問題ないのですが、今後金融機関の金利が上がらないとは誰にも言えません。

メガ大家は数多くのリスクを抱えているという見方もできます。

不動産投資は株式投資などに比較するとリスクが低く、国債などに比較するとリスクが高い、ミドルリスク・ミドルリターンの投資であるとも言われてきました。

個人情報になりますから詳しくは申し上げられませんが、特に昨今、東京都23区の外周部において、異常な高値で小規模な収益物件が売買されているケースも散見され(当然買主の利回りは低くなるはずです)、調べてみると買主は物件を見ることもせず、業者に勧められるまま購入しているというようなケースも見られます。

このようなことをするのは一部の悪徳業者であろうとは考えられますが、メガ大家に憧れ資産規模の拡大だけに目を奪われていると、思わぬ落とし穴にはまってしまい、最悪の場合破綻してしまうこともあることだけは押さえておいていただきたいと思います。

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