手元キャッシュフローを最大化する売却戦略

収益物件の売却にあたっては、最後に残った譲渡益に対して税金がかかってきます。

最終的な手残りを最大化するためにはどのように売却すべきでしょうか。

同じ売るなら少しでも手残りが多くなるよう、最大の節税効果を考えながら売却することが必要です。

今回は、税引後の手残り利益を最大化する不動産の売却戦略をご紹介します。

不動産の売却益にかかる税金

不動産投資では、会計上の利益よりも、最終的に手元に残るキャッシュフローが重要です。

無事に不動産を売却できたとしても、最後に問題となってくるのが売却にかかる税金です。

苦労して最大限高く売却することができても、税金が予想以上に高くかかってしまって最終的な手残りが少なくなってしまっては、まったく意味がありません。

手残りを最大にするためには、税金に対する理解が必須となります。

 

売却金額から簿価を控除し、さらに売却に要する費用を控除した利益に対して課税されます。

売却金額 – 簿価 – 売却に要する費用 = 利益

となり、この利益に対して課税されます。

 

簿価とは、取得価格から毎年建物と設備の部分を減価償却していったその残額です。

売却に要する費用とは、仲介手数料や売買契約書に貼付する印紙代などです。

減価償却で数年にわたって繰り延べしてきた利益に、ここでまとめて課税されるわけです。

課税の税率は、所有者が法人か個人か、また保有期間によって異なります。

 

法人所有での売却

法人の場合には、物件の売却利益や損失はその法人の他の所得や損失と合算されますので、物件の売却で利益が出れば、本業の損失と合算することができます。

逆に物件の売却によって損失が出るようであれば、本業の利益にぶつけることで利益を圧縮することができます。

その法人が不動産業でなければ、物件の売却は売上ではなく、固定資産の売却になりますので、特別利益・特別損失の扱いとなります。

上記のように、出口をコントロールして、最大の節税効果を狙いながら売却できることが収益物件の運用の大きなメリットとなります。

本業の経営状況に連動させる形で収益物件の売却を行うことで、経営の安定化を図ることができるメリットがあります。

 

法人での売却タイミング

法人で不動産を保有している場合、保有の目的別に売却の出口戦略が変わってきます。

法人の場合は個人とは違い、売却益も総合課税になるので、本業や他の物件とのバランスを考えながらの売却となります。

 

節税を重視する場合

節税を重視する場合ですが、法定耐用年数を超えた木造アパートの場合は、4年を超えて減価償却のうまみが減った物件から売却し、新たな物件を入れ替えて購入していくという戦略が考えられます。

そうすることで、減価償却の節税効果を切れ目なく継続させることができ、理論上は課税の先延ばしを延々と続けることができます。

もちろん売却した物件には売却益が発生しますので、本業などの赤字と相殺できるタイミングでの売却がベストだといえます。

 

複数棟を保有している場合

法人で複数棟を保有している場合では、同一年度内に大規模修繕などで赤字が出る物件の修繕のタイミングに合わせて、売却益が出る物件を売り、結果として損益を相殺させるといった戦略を取ることができます。

さらに本業の資金繰りで資金が必要になった場合に売却して、売却益を得るという方法もあります。

収益物件は会社経営に活用することで大きなメリットを享受することが可能となるツールとなりえるということです。

 

個人所有の売却タイミング

所有者が個人の場合は、分離課税となります。

そして個人所有の場合は保有期間によって税率が変わります。

5年超保有すれば長期譲渡となり、税率は約20%で済みますが、5年未満の保有期間だと短期譲渡として、約40%が課税されます。

課税税率が5年をまたいで約1/2となることになります。

不動産の売却にかかる税金は他の所得と切り離して考えられるので、年収が1億円の人でも500万円の人でも、収益物件の売却益5000万円にかかる税金は長期譲渡の場合で一律1000万円(20%)となります。

特に高額所得にとっては、収益物件保有中は総合課税で高い税率で減価償却を行い、物件売却時には分離課税のため税率が20%に抑えられるので、非常に節税効果が高くなります。

同時にこの税率のギャップを利用して利益を最大化することが可能となります。

 

個人の長期譲渡の注意点

長期譲渡に関して注意が必要なのは、購入した日から満5年間というわけではなく、保有後6回年を越すこと(1月1日時点で5年超保有していること)が要件だということです。

満5年保有していても、年を越したのが6回未満であれば短期譲渡となってしまい40%課税されてしまいますので注意しましょう。

また、不動産に係る税務は複雑なので、不動産の分野に精通した税理士に依頼することをおすすめします。

不動産は金額も大きく、減価償却に関する建物価格や設備価格などについてミスがあれば取り返しがつきません。

【まとめ】
⦁ 不動産投資では、最終的に手元にいくらの現金が残ったかというキャッシュフローが重要なため、税金対策を考えた売却戦略が重要である。
⦁ 法人で保有している収益物件の売却に最適なタイミングは、本業での赤字や他物件の大規模修繕などの赤字で売却益を相殺できるタイミングを戦略的に図ることで節税効果を高めて利益を最大化するべき。
⦁ 個人で保有している収益物件の売却に最適なタイミングは、売却益にかかる税率が40%から20%に下がる5年超の保有後とするべき。