収益物件の運営から得られる主な収入は家賃・共益費・更新料です。しかしその一方、収益物件の運営には維持費や管理費等の費用もかかります。
費用が多ければ多いほど利益や所得は減るわけですが、その分納める税金額は少なくなります。
税金とのバランスを考える上でも、また余計な税務上の嫌疑を受けないためにも、経費計上できるものとできないものを理解して、適切な会計処理を行っておくことが大切です。
経費として認められるかどうかは、「物件活用のために使うお金かどうか」
所得税の金額はいくら利益・所得を得ているかで決まります。
所得は、「収入-必要諸経費」で表されますから、経費として処理できるものが多ければ多いほど所得を減らし、税金額も減らすことができます。
必要諸経費として認められるお金かどうかは、「収益物件活用のために使うお金かどうか」が判断基準です。
例えば、収益物件を運営しているオーナーだからといって、家族や友人と食事に行ったお金は原則経費として認められないというわけです。
その一方で、書籍購入費等で収益物件活用・取得のための勉強に使うものの購入代金等は経費計上が認められます。
以下では不動産所得ならではの経費計上できるものとできないものについて例を用いながら解説していきます。
不動産所得で経費計上できるものとできないものの例
上でお話ししたような判断基準を基に、不動産所得で経費計上できるかどうかの例を紹介します。
1.税金
収益不動産の取得・運営にかかわる税金は必要経費として認められます。
認められる例:不動産取得税、印紙税、登録免許税、固定資産税・都市計画税、個人事業税、利子税、法人事業税など
認められない例:所得税、住民税、法人税、法人住民税、延滞税など
2.融資の元利返済額
融資については元本返済部分は経費として認められません。経費計上できるのは金利の返済分、いわゆる支払利息分のみです。
3.入居者募集のための費用
これは原則としてすべてが収益物件活用のための費用ですから、全額認められます。
例えば仲介手数料、広告料の他、テナントや入居者との付き合いの費用(サービス家具等の費用)も認められます。
4.物件の維持管理のための費用
これも3.と同じです。維持費・管理費・修繕費、全て経費として認められます。
5.書籍・セミナー・研修費用等
収益物件運用・活用・取得のための費用であれば経費計上が認められます。
例えば、不動産関連の新聞・書籍の購入費用、不動産セミナー参加費、コンサル料はOKです。
しかし、不動産の勉強のためであっても資格取得費は「個人に属する個人的な支出」とみなされるため経費として認められません。そのため宅建・マンション管理士・不動産鑑定士等の資格取得のための教材費・受験料等は全額NGです。
6.交通費等
取得物件の確認や調査のための電車代、バス代、ガソリン代等は全額経費として認められます。
物件活用のためのセミナー等への移動費も経費計上可能です。
ここでもやはり、資格取得のための移動費・交通費は経費計上が認められない点は変わりません。
7.旅費
法人で物件を運営しているような場合、従業員が50%以上参加する慰安旅行費は複利交通費として認められます。その一方で、家族だけの慰安旅行費はたとえ家族が従業員扱いであっても認められません。
8.自動車関連費用
ガソリン代・自動車税・保険料・車両代など幅広く必要経費として計上できます。
ただし、交通違反の罰則金等は個人に属するものですからNGです(個人で収益物件を運用している場合も同様)
9.交際費
管理会社の担当者、仲介業者の担当者、従業員等との飲食費は交際費として経費計上できます。
家族・友人との会食はNGです。
個人の場合、交際費は線引きが難しいですから領収書に食事をした相手を記載しておくことをお勧めします。
法人の場合は会社の資本金額に応じて扱いが分かれます。
資本金が1億円を超える場合、接待交際費の内飲食費の50%を経費として処理できます。
資本金1億円以下の場合、「接待交際費の上限800万円まで」か「飲食費の50%まで」かの選択になります。
10.自宅・自家用車関連
個人事業として自宅・事務所を兼用している場合や、自家用車を物件運営等でも利用しているケースです。
この場合は線引きが難しく個別性も強いので、税理士等にご相談することをお勧めします。
不動産所得で経費計上できるものとできないものを徹底解説!まとめ
・多く経費を計上できるほど利益・所得を少なくできるため、税金額は少なくなる
・なんでも経費として計上できるわけではない
・判断基準は「物件活用・取得等のために使うお金かどうか」
・その他、細かい規定もあるので上記で確認
・自宅や自家用車関連費用については税理士に個別事情を踏まえて相談するのが確実