「仮登記」の不動産は注意が必要

気に入った収益物件を購入する際に、登記簿謄本を何気なく見ていたら、『仮登記』の記載があった場合どうすればいいのでしょうか?

あまり見かけないし、仮の登記だからいいか・・・などと甘く見ているととんでもないことになる場合もあるので要注意です。

仮登記は名前こそ『仮』となっていますが、実は非常に重要な意味のある登記なのです。

仮登記の意味を知らずにその収益物件を購入すると、取り返しのつかないことになる可能性がありますので、この記事でよく確認してください。

この記事では、仮登記の知っておくべき意味と警戒すべき2種類の仮登記をご紹介します。

仮登記とは?

仮登記とは、本登記をするために必要な要件が揃っていない場合に、将来本登記をすることを前提にあらかじめその順位を確保するためにする登記のことをいいます。

簡単に言うと、『登記順位を予約して押さえておくための登記=順位保全登記』のことです。

このため、仮登記をしたあとに別の登記がされたとしても、後日仮登記に基づいて本登記をすれば、仮登記以降の登記は覆されることになります。

仮登記自体には具体的な対抗力はありませんが、仮登記はいつ本登記されるか分からないため、常に本登記されることのリスクを考えておく必要が出てくるのです。

そして、そのようなリスクをそのままに収益物件を買い入れることは当然してはいけません。

参考記事仮登記とは?

注意すべき2種類の仮登記

仮登記はその性質を大きく2種類に分類することができ、不動産を購入する際には、この双方に対して注意が必要となります。

物権保全の仮登記

売買によって不動産を取得したが、その際に権利証などを紛失してしまい、今すぐ所有権移転登記ができない場合に、とりあえず登記順位を予約するために行う仮登記のことをいいます。

物権保全とは、この場合不動産に対する『所有権』という権利を、仮登記によってその順位を予約し、保全することを意味します。

このケースは不動産を売買したことなどによって、すでに『権利変動』が起きていることが前提となります。

請求権保全の仮登記

請求権の保全とは、

  • 未だ権利変動が起きていない状況下において、将来の債務を担保するために行う仮登記
  • 将来一定の条件が揃えば権利変動をする予定があるが、今はまだ条件が満たされていないため、すぐに所有権を移転できないような場合に行う仮登記

のことをいいます。

権利変動はまだ起きていないため、あくまで『請求権』を保全することになります。

仮登記が登記されていることのリスク

仮登記は登記の『順位』を予約する登記です。

仮に所有権移転仮登記がある収益物件を購入し、自身を所有者として登記したとします。

そしてそのあと仮登記に基づいた所有権移転の本登記がされると、以前の順位を予約していた仮登記に基づく本登記が優先されるため、先に行った所有権移転は否定されることになってしまいます。

つまり、仮登記があるということは、その内容によっては、後から行った登記の効力が否定され、登記官の職権によって『抹消』されてしまうという、大変大きなリスクがあるということを示しています。

仮登記が抹消されるまでは買うべきではない

仮登記がある物件は非常に高いリスクがあります。いつ本登記がされて、自身の権利が覆されるか分からない仮登記付きの物件をわざわざ買う理由はどこにもありません。

中には抵当権の抹消と一緒に簡単に抹消できる仮登記もあります。

 

古い収益物件の場合に、『条件付賃借権設定仮登記』という仮登記がされていることがありますが、これはその物件を購入する当初に融資をした金融機関が、抵当権と一緒に仮登記をしていたものです。

当時は抵当権の実行によって不動産を競売する際に、これを阻止するために居座り屋に不動産を占有させるといった事案が多発したため、これを防止する目的で金融機関が条件付賃借権設定登記を行っていました。

この仮登記は、売主がローンの残債務を一括返済すれば抵当権とともに抹消することができますので、仮登記でもそれほど危険なものではありません。

 

仮登記にも種類がいろいろありますので、仮登記付きの不動産売買にあたっては、事前に抹消できるものなのか、詳しく売主側に確認する必要があります。

そして、あきらかに順位の保全が仮登記によってなされているときは、抹消できませんので、購入は見送るべきです。

まとめ

仮登記を見かけることは少ないですが、登記簿に仮登記が設定されているときは、抹消できるかどうかがポイント。
仮登記によって明らかに順位の保全がなされているときは、まず抹消はできないので、購入は見送るべき。
仮登記はいつ本登記がされるか分からず、もし本登記がされると、それより後の順位の所有権ですら、登記官の職権で抹消されてしまうというリスクがずっとつきまとうことになる。