【新米宅建士へのアドバイス】位置指定道路について

位置指定道路(五号道路)は、ミニ開発で多く見かける機会のある道路ですが、大規模宅地開発地のようなところでも位置指定道路とされていることがあります。
位置指定道路については、分割して戸建住宅用地として販売することが合理的と考えられるような比較的規模の大きい土地の売買を手掛ける時に十分理解しておく必要がありますから、少々詳しく解説します。

位置指定道路の築造基準

建築基準法第42条1項5号では、以下の①~③のいずれにも該当する道についてはこれを建築基準法上の道路として扱うとされています。

  1. 道路法、都市計画法、土地区画整理法、都市再開発法、新都市基盤整備法又は大都市地域における住宅及び住宅地の供給の促進に関する特別措置法によらず築造されること
  2. 政令で定める道路築造基準に適合すること
  3. 特定行政庁からその位置の指定を受けたものであること

①はやや難しいかもしれませんが、一言で言うと「企業や個人等の私人が宅地分譲事業等、土地利用のために造る道路でも良い」という意味にとらえておいて問題ありません。
開発面積が比較的小さく、開発行為にあたらないような場合のミニ開発でも良いということです。

②の政令で定める道路築造基準については、よく覚えておかなければいけません。この道路築造基準を誤って覚えていたために、宅地分割が思うようにできなくなることがあるからです。

これについては建築基準法施行令第144条の4で、以下の通り定められています。

「一、両端が他の道路に接続したものであること。ただし、次のイからホまでのいずれかに該当する場合においては、袋路状道路(行き止まりの道路)とすることができる。」

両端が他の道路に接続したものとは、以下のような状態です。

青の色抜き部分が位置指定道路ですが、左は南と北で既存の道路に接しており、右は南の道路に二か所で接しています。
この条文が言っているのは、原則として位置指定道路を新しく作るなら、このように既存の道路から既存の道路へ通り抜けができる道にしてくださいね、という規定です。

しかし、このような道路が作れる土地となると、角地や二方路地であったり、または間口が余程広く道路に面していたりする土地でなければ現実は難しいでしょう。

そのため、同条文では以下のような場合は袋路状道路とすることができるとしています。

イ 延長(既存の6m未満の袋路状道路に接続する道にあっては、当該袋路状道路が他の道路に接続するまでの部分の延長を含む。ハにおいて同じ)が35m以下の場合
ロ 終端が公園、広場その他これらに類するもので自動車の転回に支障がないものに接続している場合
ハ 延長が35mを超える場合で、終端及び区間35m以内ごとに国土交通大臣の定める基準に適合する自動車の転回広場が設けられている場合
ニ 幅員が6m以上の場合
ホ イからニに準ずる場合で、特定行政庁が周囲の状況により避難及び通行の安全上支障がないと認めた場合

ややイメージがわきにくいかもしれませんので、解説します。
この条文のそれぞれは、主に「自動車通行上支障がないこと」を要求するものになっています。
イは、新しく作る道路の長さが35m以下の場合は行き止まり道路にしても良いですよということです。おそらく35m程度であれば、自動車が入り込んでもバックで出れば問題ないと判断したのでしょう。

ロは終端が公園等で、自動車が方向を変えてその道路から既存の道路に出ることができれば良いとしています。このため、既存の公園に位置指定道路が終端で接していなくても、下の図のように終端に自動車転回広場を作れば良いということになります。

ハについて、ロのイメージ図よりも長い道路を作る場合は35mごとに自動車転回広場を作ってくださいねということになります。これは終端まで行かなければ自動車が方向転換できないということを避けるための規定です。この場合の転回広場は、道路のいずれか片方に造っても良いことになります。

ニについては、幅員が6m以上あれば通常は自動車がすれ違うことができるから問題ないと考えているようです。

以上のとおり、法の原則は「35m」ごとに自動車が方向転換したり道を譲りあったりできる余裕をもって道路を作ってくださいということになっています。

尚、転回広場のサイズ等は自治体によって異なることもあるようですので、調査対象地のある役所で十分確認してください。

位置指定道路の所有形態のあれこれ

以上のように、位置指定道路は私人が作るものですから、ほとんどの場合公道ではなく私道です。そのため、道路の所有形態も様々です。また、道路であっても登記簿上の地目が「公衆用道路」になっておらず、「宅地」である場合もあります。

道路の土地が1筆で、それぞれの開発地域内の宅地所有者の共有持分で登記されているケース(この場合、宅地が売却されると道路の土地の共有持分も併せて売却されるケースが多いでしょう。道路の土地価格はほとんどの場合ゼロに等しいとは思いますが)、道路が複数の筆に分けられていて、各宅地所有者がそれに対応する道路部分の土地を単独で所有しているケース等様々です。

これらの調査に関しては、調査対象地の土地の登記簿を取得した上で、道路の土地の登記簿も取得します。尚、道路が細かく分筆されているような土地の場合は、売主に対応する道路の地番を聞いておく必要があります。

また、道路が分筆されているような場合、道路は私道であっても例えば自分のものを置いたり、駐車場代わりにしたりしてはいけないものなのですが、道路のうち所有者となっている筆の部分については「自分が優先的に使って良いもの」と勘違いしている方もいらっしゃいます。
現地ではこのような使い方がされていないかどうかも併せてチェックするようにしましょう。

纏め

  • 位置指定道路の築造基準を知っておけば、規模の大きい土地の取引がスムーズになる可能性がある
  • 築造基準は基本的に「車が支障なく通行できるか」という観点で定められている
  • 位置指定道路の所有形態によっては、不法に利用している人もいるため現地でそのような利用形態になっていないか確認しておくこと