【新米宅建士へのアドバイス】日影規制にご用心

日影規制は、建物の高さ等を隣の土地に及ぼす日影によって制限する規制です。

これは高層建物の乱立によって日照が阻害されて環境が悪化することを防止するためにかけられています。

そのため、あまり日照は関係ない商業地域・工業地域・工業専用地域には基本的に日影規制の適用はありません。

しかし、これら日影規制の適用がない用途地域の土地であっても、周辺の地域の日影規制の内容を見落とすと大変なトラブルになるケースもあります。

 

日影規制の対象となる建築物

基本的な事項ですが、日影規制の対象となる建築物は以下の通りです。

尚、具体的に何時間の日影時間を超えてはならないかは別途個別に調査してください。

用途地域 制限を受ける建築物
第1種低層住居専用地域

第2種低層住居専用地域

軒の高さが7mを超える建築物、または地階を除く階数が3以上の建築物
その他の用途地域

※商業地域・工業地域・工業専用地域を除く

高さが10mを超える建築物
用途地域の指定のない区域 高さが10mを超える建築物

 

「軒の高さが7mを超える」とは、イメージで地面から梁までの高さととらえておいてください。

それ以前に、第1種低層住居専用地域や第2種低層住居専用地域では、建物の絶対高さ制限として10mや12mといった厳しい規制がかかること、高度規制もほとんどの場合で厳しいことから、土地の形や面積、方位にもよりますが、日影規制が問題になる場合があまり多くない印象があります。

 

「高さが10mを超える」とは、その通り地面から建物の一番高いところの高さ(避雷針等は除く)ということでおおよそ良いでしょう。

私も建築の専門家ではありませんが、特殊な建築物でない限り日影規制をざっくり検討する場合は私は概ね「1階あたり高さ3m」と考えます。

つまり、「高さが10mを超える」は、「4階を超えると日影規制の対象となる可能性が高くなるからより注意する必要がある」と考えています。

 

正確に日影規制の対象になるかどうかは竣工図等を見なければわかりませんが、おおよそこのようなイメージでよいと思います。

 

いずれにせよ、日影規制によって例えば指定容積率300%の地域なのに実際は容積率200%程度の建物しか建築できない等、容積率を十分消化できないケースはあるので、必要がある場合は大まかでも日影図を書いてチェックする必要があると言えます。

 

日影図はcadでチェックすることができますし、cadが使えない場合は仮に北側斜線制限があった場合、1階あたりの高さは3mとしてどの程度の建物が建つかといったように考えることも通常のマンションであれば有用です。

 

※最終的なチェックは建築士等による日影図チェック、斜線制限チェックを踏まえたうえでどの程度の建物が建つかという検討(これをボリュームチェックと言います)が必要です。買主が法人等であれば買主自身で行う場合もあるでしょう。

 

商業地域であっても…?

商業地域は基本的に日影規制がかかりません。

つまり、建築法規を勉強した多くの方が

「土地の形や面積にもよるが、基本的には商業地域は容積率をほとんど使った高層建物が建てられる」

という考え方をする傾向があります。

 

しかし、建築基準法第56条の2、第4項を見てみましょう。

「対象区域外にある高さが十メートルを超える建築物で、冬至日において、対象区域内の土地に日影を生じさせるものは、当該対象区域内にある建築物とみなして、第一項の規定を適用する。」

とされています。

 

これは、日影規制がかかっていない土地に建築物を建てるとき、日影規制の対象区域内の土地に日影を生じさせるものについては、日影規制の対象となりますよということです。

 

具体的に、商業地域において大きなトラブルを生みかねない例を紹介しておきます。

以下の図をご覧ください。

 

対象地は真南で道路に面しており、用途地域の跨りもない、容積率は500%の土地です。

対象地は容積率500%ですから、少なくとも5階、設計や配棟によっては8~10階程度の建物を建築しようと考えるのが通常でしょう。

しかし、対象地のすぐ北側は第2種用途地域の指定を受けています。日影は南から北に向かって伸びますし、北側の隣の土地のゾーンに入ってすぐ日影規制の対象区域になっています。

 

こういった場合、建築士等におおまかな設計を入れてもらって日影チェックをする必要はありますが、場合によっては容積率500%の商業地域の土地であっても、3階建までしか建築物は建てられないということもある可能性があります。

 

そのため、調査の対象となっている土地が商業地域であっても、すぐ後ろに日影規制の対象となる用途地域が指定されている場合、十分注意しなければなりません。

場合によっては、容積率500%の商業地域の土地ですから少なくとも8階建は建ちますよと言って売買してしまって、そのあと日影規制の関係で3階建までしか建たないから契約を解除してくれと言われたり、損害賠償請求をされたりといったことも考えられます。

 

尚、余談ですが、商業地域の場合このように日影規制が思わぬところでかかってくることもあるので、南側で道路に面している土地よりも北側で道路に面している土地(道路の幅の部分だけ日影規制が緩くなります)の方が好まれる地域もあります。

 

 纏め

  • 日影規制によって容積率を十分消化できないケースもある
  • 商業地域で日影規制の対象外の地域であっても、周囲に日影規制の対象地域がある場合は十分注意しなければならない