境界石とは?種類や見方、設置の決め方についてプロが徹底解説!

 

境界石とは隣の土地や道路等との所有権の境目を示すもので、境界杭、境界標等とも呼ばれます。
現地調査ではこの境界石を探して確認することで、所有権の範囲がどこからどこまでなのかを確認します。

今回こちらの記事では境界石の種類や見方、設置の決め方、種類やトラブルもご紹介していきます。

 

境界石とは?〜境界という言葉の意味

やや硬い話になりますが、まずは”境界”という言葉の意味を整理しておきましょう。

境界とは、一言で言うと「自分の所有地の範囲と隣地の所有地の範囲との境を示す線」という意味です。ただし、法的な意味での境界という言葉は、「地番と地番の境を示す線」という意味でとらえられており、この意味でのとらえ方は公図と同じです。

やや分かりにくいですから、下のイメージ図を見てください。

上の図は、黒の線が公図上の地番の境を示します。しかし、実際の所有権の境は赤の線で、地番Aの所有者の所有権が及ぶ範囲は公図上の表示よりも広くなっています。

所有権の範囲を決めた際に、土地の分合筆の登記をしていなかったこと等が原因でこのように公図上の地番境と所有権の境が一致しない状態になっていますが、このような場合でも実際のAの所有権は赤の線までが有効であるとなります。

公図上の境界は最初の法的な意味での境界なのですが、「隣接する土地の所有者同士がこれと異なる線を所有権の境として合意したとしても、これによって(法的な意味での)境界が動くものではない」とされているからです。

そのため、必ずしも公図で示されている地番上の境界(法的な意味での境界)と、現実の所有権の境界が一致するものではないことを覚えておく必要があります。

このように地番上の境界と現実の所有権の境界が異なってても、A地B地の所有者の両方が合意していれば良いのですが、これについて争い/トラブルが起きることもあります。

この場合は、双方で話し合って図面に残し、境界確定図を公図とは別に作成しておくか、話し合いがまとまらないのであれば境界確定の訴えによって所有権の境界をしっかり決めておく必要があります。

 

筆界特定制度もおすすめです

境界確定の訴えは時間も費用もかかりますので、筆界特定制度という制度を利用することも良いでしょう。
筆界特定制度では土地の価格によって申請手数料が異なりますが、基本的には「土地の価格400万円ごとに0.02%」と覚えておけばよいでしょう。

例えば、400万円までの土地であれば400万円×0.02%=8,000円、400万円を超えて800万円までの土地であれば800万円×0.02%=16,000円となります。詳細は法務局ウェブサイトでご確認ください。

不動産取引にあたっては原則として売主の負担でこのように所有権の境界をはっきりさせてもらっておく必要があることを覚えておいてください。

 

境界石の種類

境界石とは所有権の境界を示します。境界石の種類にはコンクリート杭や石杭、金属杭、金属鋲・金属プレート、プラスチック杭や木杭等があります。

ちょっと豆知識的な話になりますが、なぜこのように種類、材質の違いがあるのかをお話しします。

コンクリート杭や石杭は永続性のある杭として、一般的に多く使用されている杭です。また、コンクリートや石の杭は簡単には動かせないため、境界石を勝手に動かされる危険が少ないという点でも優れています。

地盤が固い場合やブロック塀のちょうど中心点等が境界になっていて、コンクリート杭や石杭等が設置できないような場所では、金属杭、金属鋲、金属プレート等が代わりに用いられています。これらももちろん境界石としては有効なものなのですが、錆びて腐蝕する材質であるため、永続性という面ではやや劣ります。

プラスチック杭や木杭はコンクリート杭や金属杭に比較すると耐久性が劣ることや容易に動かされやすいため、コンクリート杭や金属杭等を設置するまでの間の仮杭として用いられていることが多くなっています。

このように場所やケースによって境界石の種類が変わるわけなんですね。

 

境界石は種類だけでなく、色も変わる!

尚、蛇足かもしれませんが登記所に備え付けるべき精度の高い地図を作成するための地籍調査においては、市町村境や官民境界(公道と私有地の境目等)、民民境界(私有地と私有地の境目)を示すための杭の色を使い分けています。

具体的には市町村境を示す場合には白杭を、官民境界を示す場合には黄杭を、民民境界を示す場合には赤杭が使われています。

白杭は見かける機会は非常に少ないとは思いますが、実際に境界石を目にした時に何と何の境界を示すものなのか分かるようにしておくと何かと便利です。(地籍調査が行われている地域はまだまだ非常に少ないですが…)

 

境界石の見方

それでは次に境界石に見方について解説していきます。境界石は、その天頂部に境界が示されます。十字であればその交点が、矢印であればその先端が境界杭を示します。

代表的な境界石の表示を以下で紹介しますので、現地で確認してみてください。

・十字の場合…交点が境界になります。尚、金属鋲も交点が境界、●印しかなく線がない境界石の場合は●の中心が境界となります。これらのタイプの境界表示の場合、隣接する土地だけではなく交点で周囲4つの土地の境界を明示することができますから、隣接している土地が多い場合等で利用されています。

【十字】 【金属鋲】 【●印の境界石】

・矢印の場合…矢印の先端が境界になります。矢印の境界では基本的に1点しか境界を表示できないために、隣接する土地との間の境界だけを示していたり、私有地と公道の間の境界だけを示していたりすることが多くなっています。

尚、十字や矢印等の境界の表示は設置から長い年月が経つうちに摩耗したり、石が欠けてしまったり、色が剥げたり、杭自体が腐蝕してしまったりして表示がはっきりしなくなっていることもあります。

そのような場合に、何の根拠もなく例えば杭の中心部が境界点であろうと判断することは危険です。上の図でご覧の通り、境界石自体も境界点を示す点の他に、数センチ程度の余裕があるからです。
隣接地の所有者は通常は自分の土地が0.01㎡でも広い方が良いわけですから、この程度の誤差であってもクレームを言う方もいます。

現地では境界石を確認することも大切ですが、公図・地積測量図・実測図等と実際の境界を照合しつつ確認することが重要であることを覚えておいてください。

 

まとめ

  • 現実の所有権の境界は必ずしも公図上の地番の境と一致しないことがある
  • 境界が確定していない場合は話し合いや境界確定の訴えを提起する他にも、筆界特定制度によることもできる
  • 現地調査では境界石の見方を覚えておく他、図面等との照合をしておかなければならない