建物と土地を一体で売却した場合、それぞれの金額に分ける必要があります。
今回は、どのようにして建物と土地の価格を分けるかについて説明していきます。
建物と土地の価格は契約書上どうなっているのか?
早速ですが、建物と土地を一体で売却した場合、どのように分ければよいのでしょうか。
一番簡単なのは、当たり前ですが、契約書に土地と建物の金額が明示されている場合です。
具体的にそれぞれの金額が明示されていなくとも消費税額が契約書上に記載されていれば、消費税は建物にしか掛かっていないので、その消費税額を8%ないし5%で割り戻すことで建物の金額を算出することは可能です。
しかし、実際には、新築のマンション販売など以外では、建物と土地の値段が契約書上明示されていないことのほうが多いといえます。
では、契約書に土地と建物の金額が明示されていない場合、どうやってそれぞれの金額を求めればよいのかを検討してみましょう。
売り主は土地価格が多い方がよく、買い主は建物価格が多い方がよい
売り主から見ると建物の金額が大きいと納税すべき消費税額が大きくなります。なぜなら、建物は消費税の課税対象であるのに、土地は消費税が非課税だからです。
建物の金額が大きい方が預かった消費税額が大きくなるので、売り主が納める消費税額は大きくなるのです。
一方、買い主から見ると建物の金額が大きい方が、その後の減価償却費を多く取ることができ、節税対策上有利になります。
つまり、同じ金額での不動産の売買であれば、売り主は土地の割合が多い方がよく、買い主は建物の割合が多い方が良いことになります。
しかし、売り主、買い主がそれぞれなんの根拠もなく、自分の好みで土地と建物の金額を定めることはできません。
土地と建物の価格を分ける
では、どのように土地と建物の価格を分ければよいのでしょうか。その計算方法は必ずしもひとつではありません。
計算根拠が合理的なものであれば、その金額に基づく利益の計算が認められます。
基本通達では、
- 譲渡時における土地及び建物のそれぞれの時価の比率による按分
- 相続税評価額や固定資産税評価額を基にした按分
- 土地、建物の原価(取得費、造成費、一般管理費・販売費、支払利子等を含みます。)
を基にした按分とされております。
その具体的な計算根拠は特に定められていませんが、次の3つのパターンが良く用いられます。
(1) 公示価格比準で土地をまず算出して按分
土地の実勢価格を「公示価格」ベースでまず算出し、全体の譲渡対価から土地の金額を差し引くことで建物の金額を計算する方法です。
具体的な計算方法は、路線価が公示価格の80%になるように設定されていることを利用し、土地について道路一本一本ごとに定められた路線価等をベースにして計算した相続税評価額を80%で割り戻すことで土地の金額を算出します。
(2) 固定資産税評価額の比で按分
譲渡した不動産の、家屋と土地それぞれの固定資産税評価額の比で全体に占める建物と土地の割合を求め、譲渡対価にそれぞれの割合を掛けることで土地と建物の金額を計算する方法です。
計算が簡単なので利用される例が多く、固定資産税評価額が、土地については、概ね時価(公示価格)の70%程度なのに対し、建物は新築だと建築価格の60%程度なので実勢価格よりもやや建物の割合が低く出がちです。
(3) 再調達原価で建物をまず算出して按分
今、同じ建物を取得するとしたらどれくらい掛かるのかという「再調達原価」をベースにまずは建物の金額を求め、全体の譲渡対価から建物の金額を差し引くことで土地の金額を計算する方法です。
具体的には、建物の取得価額から定額法による減価償却累計額を差し引くことで建物の再調達原価とします。
一般的には、定額法の償却分よりも現実の建物の価値が下がることが多いので、やや建物の割合が高く出る傾向があります。
ただ、売り主はそれで良いですが、買い主はそもそもいくらを取得価額にすればよいのかがわかりません。
その場合には、国税庁が提示する「建物の標準的な建築価額表」などを用いた金額から経過年数に応じた減価償却費を差し引くことで再調達原価(購入時の取得価額)としてもよいです。
本来は、「譲渡した時」の建物の「取得費」がわからない時に利用される計算式ではありますが、一定の合理性はあるはずです。