賃貸併用住宅とは?裏側に隠された4つのデメリットと失敗事例を徹底解説!

※2019年10月更新

ここ数年の傾向として「賃貸併用住宅」を進める建築業者や不動産業者が多くなっています。

実際本記事をご覧になっている方も業者からいくつか提案されたご経験もあるのではないでしょうか?

そこで今回こちらの記事では、賃貸併用住宅とはどのようなものか、その裏側に隠されたデメリットと失敗事例についてご紹介します。

まずはここ最近、賃貸併用住宅が増えてきた理由をおさらいするため、都心の不動産状況について見ていきましょう。

 

都心部における住宅価格は上昇、面積は縮小傾向

平成25年頃から不動産の価格は東京都心部を中心に上昇しています。

元々戸建住宅やマンションを購入すると高額であった高級住宅地だけではなく、平成24年頃には総額4~5千万円程度で戸建住宅やマンションが購入できた地域でも、個人的な感覚では取引総額が5百万円~1千万円程度上乗せされてきているというのが感覚です。

また、戸建住宅1つ当たりの土地も、ここ10年程度で平均面積が小さくなる傾向があります。土地面積が小さくなれば当然建築できる建物の面積も小さくなります。

だからと言って戸建住宅をやめてマンションを買うと言っても、新築マンションは新築マンションで値段が高くなっています。最近ではやや落ち着いてきているとはいえ、マンションも新築では買える値段ではなく、中古マンションを選択する人が増えている状況です。(尚、ここで裏情報ですが、東日本大震災後は新築マンションの間取りをやや小さくしたり、ある意味安普請をしたりして価格に転嫁しないようにしている場合もあるようです)

必ずしも給与所得が上昇していない中住宅価格が上昇傾向にありますので、マイホームの購入に当たって、旧来は夫婦いずれかが債務者、いずれかが保証人というローン契約も多かったものが、最近では夫婦共働きを前提として連帯債務者とされるローン契約も増えているようです。

そのような中で、「賃貸収入をローンの返済に当たられる」という賃貸併用住宅という選択肢を勧める業者が増えており、セミナーも開かれています。

 

賃貸併用住宅とは?下宿とどう違うの?

賃貸併用住宅は、家族用の自宅と賃貸用のアパートをくっつけて建築する建物で、一言で言うと「自宅兼賃貸アパート」と言えます。

賃貸用の貸室はきちんと壁で区切られており、家族用の自宅と各貸室の入口は独立して鍵がかかります。

当然ながら水回りも自宅の分と各貸室分、それぞれに備え付けられています。

この点で自宅の中に居住希望者を住まわせる、いわゆる「下宿」と違っています。

【賃貸併用住宅イメージの一例】

2階 貸室 貸室 貸室
1階 自宅
土地

 

業者が賃貸併用住宅を勧める理由

日本の人口の大部分を占める中産階級の方は以下の3つの状況によって「新築住宅の購入は諦めて中古にする、またはもう少し市場の様子を見てから決めよう」という考えに至っているケースが多く見られます。

  • 東京23区等の都心部で住宅価格が高騰していること
  • 戸建住宅としてマイホームを購入しても土地面積も小さく、建物面積も小さくなる傾向があること
  • マンションにしても建築費の高騰によってマンション購入者の価格にその分が転嫁され新築マンション価格が上昇している

だからこそこのニーズにぴったりであろう賃貸併用住宅を業者が勧めてくるのです。

業者が賃貸併用住宅を勧める際のセールストークで多いのは、以下のようなものです。

業者
不動産投資は巨額のお金が必要になります。また、住宅ローンが適用されますから、アパートローンに比べると借入金利も低くおさえられ、しかも家賃収入をローン返済にあてられますから、返済の負担も少ないですよ。場合によってはマイホームを実質ゼロ円で購入できます

 

確かに、賃貸併用住宅の建築・借主の募集・家賃設定・ローン返済額と家賃のバランス・修繕計画等が上手く行けば、理論上はマイホームを実質ゼロ円で購入できることはうなずけます。

しかし、賃貸併用住宅には業者が見落としていること、セールストーク中であえて言っていないと考えられるリスクについても、十分に検討しないと大変なことになってしまうのです。

その詳細について、次の項目からお話しします。

 

賃貸併用住宅の4つのデメリットと失敗例

賃貸併用住宅には4つのデメリットがあります。それは

  1. 戸建住宅と比べると建築コストが高くなる
  2. 間取りの変更が難しい
  3. 戸建住宅に比べてより広い土地が必要になる
  4. 入居者入替毎に貸室部分の内装リフォームが必要になる。

の4つ。それぞれ失敗例と共に解説していきます。

 

賃貸併用住宅のデメリット1『戸建住宅と比べると建築コストが高くなる』

賃貸併用住宅のイメージは下の図の通りです。そして、自宅、各貸室のそれぞれにキッチンや浴室等、一通りの住宅設備が必要になります。

【賃貸併用住宅の一例】

2階 貸室 貸室 貸室
1階 自宅
土地

一世帯用の戸建住宅であれば、2階部分の個室には水回りや浴室、それに伴う配管等は必要がなく、1つだけでいいのですが、貸室分これらの設備が余分に必要ですから、その分建築コストが高くなってしまいます。

またエアコン等の空調設備も貸室数分独立して必要になります。それに加え、戸建住宅であれば通常は木造、または鉄骨造であろうと思いますが、賃貸併用住宅にして騒音対策が必要と考えるならば、どうしても鉄筋コンクリート造にするか、特殊な遮音構造にする必要があるため、その分建築コストはより高くなります。

 

【賃貸併用住宅の失敗事例1】

設備部分に関して、特に水回りやキッチン部分のコストがかかるため、これらのグレードを下げたところ、入居者がなかなか入らなかった。または家賃を予定より値下げして入居してもらわざるを得なかった。

 

例えばワンルームタイプの貸室にする場合、都市部ではキッチンにはガスコンロを使わずにIHヒーターを入れるのが一般的です。

IHヒーターはおおよそ本体+設置工事費で1台当たり30,000円前後の取り付けになりますが、この部分でコストを少しでも削減しようとしてこれを電気コンロ(本体+設置工事費は1台当たりおおむね15,000円~高くても20,000円)にしたとします。

電気コンロは電源を入れてから熱くなるまでに時間がかかり、また調理が終わった後冷めるまでにも時間がかかりますから、入居者にとっては扱いづらいものです。また、掃除もやりにくいため不人気の設備です。
こういった点で設備面のマイナス評価をされてしまうということにもなりかねません。

都市部ではワンルーム入居者も設備の使い勝手には敏感になっていますから、設備面はどの程度か良く見られていると思った方が良いでしょう。

 

賃貸併用住宅のデメリット2『間取りの変更が難しい』

将来子供が生まれたり、両親と同居する必要が出てきたりして、自宅部分に用意しておいた部屋数よりも多くの部屋が必要になることもあります。

両親と同居中、かつ貸室部分が十分な広さが用意されているのであれば一室を転用して2世帯タイプの住宅+賃貸部分という使い方をしても良いのでしょうが、多くの場合は賃貸併用住宅プランの貸室はワンルームタイプです。

両親と同居するなどの理由で部屋数が欲しくなり、賃貸部分を合併する場合は、壁を抜くなどの建物の構造自体を改造するため余分な費用がかかります。またその時点で入居者がいた場合、代替物件を探して引っ越し代を負担する等の交渉をして出ていってもらう必要もあります。

 

賃貸併用住宅のデメリット3『戸建住宅に比べてより広い土地が必要になる』

賃貸併用住宅を建てるならば、おおよそフロアごとに家族用の自宅のフロア、貸室のフロアと分けることが通常です。

入居者と家族とが常に良好な関係を保っていれば問題はないのでしょうが、入居者は数年単位で入れ替わりますし、しかも家族は入居者にとって大家にあたるので、お互いに家賃のやり取りをしたり要望に関する交渉をしたりするような場面もありますので常に良好な関係を保つことは中々難しいでしょう。

そのため、家族用のフロア、入居者用の貸室フロアを分けておくこともリスク回避策のひとつではあります。

但しその場合、家族用の住宅部分はどうしても平面で広くする必要がありますから、戸建住宅に比べると土地はある程度の広さが必要になります。また、自宅部分のエントランスと貸室部分のエントランスは別に設けておく必要がありますし、駐車スペース・駐輪スペースも確保する必要があります。

更に共用スペースも必要になるので、意外と賃貸併用住宅は平面的なスペースが必要になるのです。

 

土地が狭い場合の賃貸併用住宅の活用の仕方

土地がやや手狭な場合、1階、2階を家族用、3階を入居者用の貸室とすることも可能ですが、その分貸室部分の面積が少なくなるため利回りは低くなってしまいます。もちろん4階建、5階建として手狭な土地を立体的に有効活用することも考えられます。

5階 貸室 貸室 貸室
4階 貸室 貸室 貸室
3階 貸室 貸室 貸室
2階 自宅
1階
 土地

しかし、この場合通常4階建以上からは日影規制がかかってきますし、3階建までであっても高度地区の規制や斜線制限等の建築関係法令の規制があります。土地の形等も影響しますが、一般的には狭い土地にペンシルビルのような細長い建物を建てようとしても、これらの規制によって建築不可となる場合が多いですから、十分に注意しておかなければなりません。

 

【賃貸併用住宅の失敗事例2】

80㎡の土地に賃貸併用住宅を建てようとして概略の建築プランを入れてみたところ、建築規制によって十分な自宅面積、貸室面積が確保できなかったため、当初予定よりも小さい建物にせざるを得ず、自宅の広さ、貸室からの収入に関して十分なものが確保できなかった。またはより広い土地を探して希望ではなかったエリアに住まざるを得なかったり、土地代が多くかかってしまいローン返済額が高くなったりしてしまった。

 

自宅の広さ、貸室からの収入等、十分に満足いく建物が建てられる土地であるのかは、概略でも建築プランを入れてみないと分からないところです。

そのため、このように当初の希望に沿わない建築プランになってしまったり、より広い土地が必要になってしまったりする可能性もあることは十分に注意しておく必要があります。

 

賃貸併用住宅のデメリットと失敗談4『内装リフォームが都度必要になる。』

一般的に賃貸アパートに関しては入居者が入れ替わる毎に壁紙の張替、浴室の修理・入れ替え、キッチン回りの設備点検や補修・入れ替えをする、内装リフォームが必要になりますから、この部分の費用が必要です。リフォーム費用は、おおむねの相場ですが、最低でも坪当たり5万円はかかると見ておく必要があります。

 

【賃貸併用住宅の失敗事例3】

リフォーム費用を節約しようとして、次の入居者が入居を決めてから内装リフォームを計画。
そのため、次にその部屋に入居しようか検討しに内覧に来た入居者が、内装が古ぼけているため気に入らず入居を決めてもらえない、ということが続いて長期間空室になってしまった。

前の入居者が退去する

次の入居者を募集する

空室の状態の部屋に内覧をしてもらい、気に入ってもらえば契約・入居

というのが入居者入替サイクルですが、ここで注意しておきたいのは内装のリフォームは前の入居者が退去した時点でやっておくことが望ましいということです。このような点も踏まえて貸室の内装リフォームはこまめにしておくべきだということになります。

 

賃貸併用住宅とは?裏側に隠された4つのデメリットと失敗事例を徹底解説!まとめ

・賃貸併用住宅は水回り等の住宅設備が自宅+貸室数分必要になるので建築コストは高くなる
・将来ライフプランや家族設計に変更があった場合はリフォームが必要になるが、自宅に比べると難しい
・賃貸併用住宅は共用スペースが必要になるため、ある程度広い土地が必要になる
・将来の内装リフォームが必要になる