※2019年7月更新
42条2項道路があると、建物の建て替え等の際にセットバックをしなければならず、その分だけ土地の面積が目減りするためしっかり調査しておかなければならないのですが、道路境界がはっきりしていない場合があることや、登記上も道路部分が分筆されておらずどこからどこまでが道路なのか分からないということも多いため、調査上悩むことが多い事項です。
今回こちらの記事ではそんな2項道路についてやや深めに、そして分かりやすくお話しします。
2項道路の認定要件とは?
はじめに、2項道路とはどのようなものか見ておきましょう。
2項道路は、基準時(その地域に建築基準法第3章の規定が適用された時点)に幅員が4m未満の道であっても、特定行政庁が指定した道については道路として認めることで、基準時にすでに建っていた建物を存続させつつ、将来的に建築物が4m以上の道路に接するようになるように定めたものです。
そのため、判例等を見ると2項道路とされる要件は以下のようなものがあります。
- 基準時において幅員が4m未満の、現に建築物が建ち並んでいる道であり、特定行政庁によって指定された道であること。尚、「建ち並んでいる」とはその道によって公道に接続する複数の建物が既に存在していることを前提とすると考えられています(地裁段階の判決)。
- 「建ち並んでいる」とは、ただ単に建築物が道を中心に2個以上存在していることを言うのではなく、道を中心に建築物が集まって市街の一画を形成し、道が一般の通行の用に供され、防災、消防、衛生、採光、安全等の面で公益上重要な機能を果たす状況にあること(高裁段階の判決)
以上のとおり、判例ではやや難しい言い回しで2項道路の要件が言われていますが、宅建士の行う調査の範囲では現存する道路が2項道路かそうでないかをチェックすれば良いので、基礎知識というよりは豆知識というイメージでとらえていただいて構わないでしょう。
ただし、2項道路はどういう道路なのかということだけは覚えておいてください。
2項道路の具体例
2項道路の現実の調査で難しいのは以下の点だと思われます。
①セットバックしている土地でも、セットバックした部分を分筆しているとは限らない
これについては、以下の図をご覧ください。セットバックを必要とする道路に面した土地の公図のイメージ図です。
上の図のピンクの部分が要セットバック部分です。そして、現実の道路はすでに両側ともセットバックが完了していたものとします。
しかし、公図を見ると、上側の土地については全てセットバック部分が分筆されており(そのため地積測量図も備えられている)、登記簿上面積も確定しています。
しかし、下側の土地は現実にはセットバックが完了しており、現地においても道路は整備されているのに、登記簿上分筆がされていません。
そのため、セットバック部分が何㎡なのか、面積が登記簿上確認できないのです。
このような場合は、建築計画概要書を取得したり、その土地の所有者から敷地図やセットバック時に作成した土地図面等を入手したりして面積を確定する必要があります。
これらの資料が入手できないような場合は、公図や地積測量図の上にセットバックが必要な部分を書き入れたうえで、プラニメーター等机上で面積を概測できる道具を使うか、△スケール等で図上求積を行う必要があります。
②そもそも私道部分が分筆されていないこともある
①と同じように、以下の公図のイメージ図をご覧ください。
公図のイメージ図の上、ピンクの網掛け部分がセットバック必要部分を含んだ私道で、現地においてもこの部分は道路になっています。しかし、公図の上ではそもそも道路部分が分筆されておらず、道路の端がどこなのか、中心線がどこなのかということが分かりません。
そのため、この道路が2項道路であるということを調べ、セットバックが必要であるということまでは分かっても、そもそも「どこから測ってセットバックさせれば良いのか」ということが図面から全く判定できないケースです。
私道は私人が所有している道路ですから、登記簿・公図上分筆することもしないことも自由なので、このようなことはよくあります。
このような2項道路に出くわしてしまったら、考えられる資料をしっかり集めなければなりません。
売主がセットバック部分を明示した実測図等を持っていれば良いのですが、それがない場合は、周辺の土地の建築計画概要書を取る、役所に私道台帳があればその写しをもらって現地と照合し公図に書き込んでいく、それらがなければ現地で土地の奥から私道までの距離を測り、更に私道の幅を測って公図等に書き込んで簡易的に道路の幅や形状等を測量して確認する等といった方法を採らなければなりません。
地道かつ言ってしまえば泥臭い作業ですが、道路は不動産の命とも言えるものですし、2項道路であれば土地のいくばくかの面積はセットバックで目減りするものですから極めて重要な事項と言えます。
そのため、このような場合でも道路の部分を確定するという調査を怠ることはできません。
【不動産プロ直伝】42条2項道路とは?認定要件や具体例もご紹介。まとめ
- 2項道路に指定される要件は、①幅員4m未満であり、②基準時に現に建物が建ち並んでおり、③特定行政庁による指定を受けていること
- 2項道路は私道であることが多く、現地でセットバックが完了していても登記上分筆されていないことがある
- そもそも元々の道路部分自体が分筆されていないこともあるため、そのような場合は公図に頼らない調査が必要になる