市街化調整区域は、都市計画区域の内基本的に開発行為ができない区域ですから、市街化区域に比較すると土地の価格は原則として低くなります。その一方で、物件の調査はかなり面倒なものとなります。そもそも、現地に行くにも最寄り駅からかなり遠く、バスの本数も少ないということもざらです。
そのため、不動産仲介業者にとっては「できれば扱いたくない」物件という方もいらっしゃいます。
ただ、いつ市街化調整区域の物件が舞い込んでくるかわかりませんから、市街化調整区域では市街化区域とどのような点が異なるのかをお話しします。
市街化調整区域とは
市街化調整区域は、都市計画法の都市計画区域における区域区分で、「市街化を抑制すべき区域」とされた区域です。
市街化を抑制すべきとされているのですから、市街化区域(すでに市街地を形成している区域及びおおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域)と異なり、原則として開発行為や都市施設の整備が行われません。
建物を新築・増築することも基本的には「許可」が必要になります。
市街化調整区域と一言で言ってもたくさんありますから地域のイメージは一概には言えませんが、おおよそ田んぼや畑、牧場等が多く農業・酪農業・畜産業等を中心としている地域や、山林を中心とした地域等がこれに該当するでしょう。
また、①市街化調整区域内の土地で、②開発許可をまだ受けていない土地については、土地の広告を出す際に「市街化調整区域であり宅地の造成及び建物の建築はできない」という表示をしなければなりませんので、広告を出すときにも注意しましょう。
市街化調整区域に建築できる建築物
市街化調整区域では市街化区域とは異なり、開発行為に土地面積の要件(○○㎡以上のものを開発行為とする等)がありません。
そのため、基本的に建物を新築・増築等する場合には全て許可が必要になります。尚、許可不要なものは図書館・公民館等の公益上必要な建築物です
そして、許可を受けるためには都市計画法第34条に定められている条件に該当しなければなりません。
都市計画法第34条では、市街化調整区域内の開発行為が、以下のいずれかの建物建築を目的としたものでなければ許可をしてはいけないと定められています。
条文は煩雑ですので、一部を抜粋して紹介します。尚、これらに該当していても必ず許可が得られるというわけではありません。
- 周辺地域に居住している人の日常生活のため必要な物品の販売・加工や修理等を行う店舗等
市街化調整区域内でも周辺で農業を行っている人が住むための家等については建築が認められます。日用品の買い物ができなければこれらの人が暮らしていけないため、その目的での店舗について建築を許可しましょうという例です。 - 市街化調整区域内の鉱物資源、観光資源その他の資源の有効な利用上必要な建築物
例えば鉱山の採掘に必要な建築物や、観光地に付属した店舗等の建築は認めましょうとしています。これらは市街化調整区域内にあることが多いですから、こういった建物を建築しなければ採掘ができなかったり観光で人を呼べなかったりして、鉱山資源や観光資源を生かせないため、認めましょうとしています。
同じように、農業、林業や漁業のために利用する建築物も認めましょうとしています。 - アスファルトプラント等、第一種特定工作物
- 野球場、陸上競技場等、第二種特定工作物
これは宅建試験でもおなじみのものかと思います。尚、第二種特定工作物に該当する者は都市計画法第34条には定められていません。
その他にも許可基準はありますので、ぜひ宅建の試験勉強をしていた時のテキストをもう一度読み返して復習していただきたいと思います。
市街化調整区域であっても高い価格・地代になる可能性のある例
このように市街化調整区域内では原則建物建築ができず、建物を建築するためには厳しい条件があり、しかも開発許可を得るために役所と綿密なやり取りをしなければならないため、通常は市街化区域に比べて市街化調整区域の土地価格はかなり低いものになります。
しかし、必ずではありませんが、市街化調整区域であっても高い価格になる可能性のある場合があります。
多くの場合は借地契約で、実際に土地を売買することは少ないと個人的に感じてはいますが、それでも市街化調整区域内の他の種類の建物を建築するときに比べるとかなり高い地代の契約になっているなと感じているものがあります。
それは、ガソリンスタンドやコンビニエンスストアを建設する場合です。
市街化調整区域は、原則建物建築ができませんから、これらの施設を作った場合、周辺に競合店舗が極めて少ないという状況になります。
特に地方部で、ある町から隣の町に行くまでに国道や都道府県道をずっと自動車で走らなければならないような場所、広い農地が主体の地域であったり市街化調整区域内に建築できる種類の工場等がぽつぽつと建っていたりして周辺で働いている人がいる場所、あるいはこれらの条件が複合した地域では、比較的人や自動車が多く通ったり周辺に人がいたりしますから、
「お客のパイは少ないかもしれないけれど、パイのほとんどをその店舗が独占できる」
という状況になり得ます。
また、店舗の場合基本的にはそこでテナントがあげられる売上や収益見通しを前提として土地の売買価格や地代額を決めるようですから、市街化調整区域内であっても高い価格・地代になる可能性もあるのです。
開発許可を取るのは煩雑で難しいですが、立地条件を十分考えて開業できれば、競合が多い市街化区域内よりも高い収益をテナントが得られる可能性もある、というわけです。
市街化調整区域内の取引について法律や調査義務・広告の決まり等は十分守らなければなりませんが、こういう可能性もあるということを頭の片隅にでも置いて、十分な物件調査をしていただければ幸いです。
纏め
- 市街化調整区域は原則として建物建築はできない
- 市街化調整区域内で建築する許可が下りる建物の種類は頭に入れておこう
- 市街化調整区域内であるがゆえに大きな収益を上げられるケースもあるので、こういった目的の場合は周辺調査を十分行うべき