不動産の取引に当たっては、売主は通常1円でも高く売りたいですし、買主は1円でも安く買いたいものです。
そうでなくても、買主はその不動産を最も有効に利用して最大限の利益を得たいと思うものです。
そのため、買主が物件取得後にどのように土地を有効活用できるのかについて相談に乗ることも不動産業者の重要な仕事であると考えます。
特に面積の大きい土地の場合、開発指導要綱の内容まで調べておくと、より丁寧な調査となるでしょう。
面積が大きい土地の場合は有効利用の方法が特殊なことがある
土地の価格を決める要因として、最寄駅からの距離や住環境等も重要なことですが、実は土地の面積というものも重要です。
例えば周辺が1区画当たりの土地面積150㎡程度の戸建住宅ばかりの地域にある170㎡程度の面積の土地であれば、その土地は通常は戸建住宅の敷地として利用するのが最も価値が高く、また土地の価格も「その地域の相場は坪○○万円」といったような相場からかけ離れるというようなことはないでしょう。
しかし、同様の地域にある敷地規模1,000㎡の土地であればどうでしょうか。
こういった土地は通常1,000㎡の土地1区画で1つの戸建住宅を建てるというような使用方法はしないでしょう。
例えば指定容積率が100%~150%程度とあまり高い建物が建てられないような場合は道路を入れて区画割して分譲用地にするでしょうし、最寄駅からの距離等の条件にも左右されますが、指定容積率が300%以上あるような場合は分譲か賃貸マンション用地として利用することが通常でしょう。
前者の区画割後の分譲用地にすると、多くの場合で新しく区画内に道路を入れて分割後の各土地が全て道路に面するように整備しなければならず、道路部分は売れない土地(つまり、潰れ地)になってしまいますから、通常は㎡単価や坪単価でみた価格はその地域の相場観からやや下がります。
一方、後者のマンション用地として利用できるような土地の場合、可能な賃料設定や建築費、分譲マンションであればマンション分譲価格にも左右されますが、場合によってその地域の戸建住宅の土地価格相場観よりもかなり高値で売却できる可能性もあります。
このように、面積によっても土地の売却価格は左右されるものだということをご理解いただきたいと思います。
開発指導要綱とは
開発指導要綱とは、「開発行為を行う際に事業者が守らなければならない基準」を定めるものです。各市区町村が定めており、多くの場合でパンフレットや冊子として販売・配布されています。
自治体によってはホームページから無料ダウンロードすることも可能です。
名称は各自治体によって異なりますので、大きい土地の調査をする際には通常調査に加えて担当窓口(ほとんどの場合で都市計画か建築関係の窓口です)で「開発指導要綱をいただけますか?」と聞いてみましょう。窓口の方であれば名称が違っても開発指導要綱という言葉でほぼ通じます。
窓口で頒布されている価格が高いと思ったらネットでダウンロードできるかどうか聞いてみましょう。窓口では無償頒布されている場合も、数千円取られる場合もありまちまちです。
さて、開発指導要綱には概ね以下のようなことが書かれています。
土地を区画割して戸建分譲用地にする場合
- 1区画当たりの最低面積
- 道路の新設にあたっての基準(道路幅員・自動車展開広場等)
- 公園整備の基準
- 緑化基準
- 上下水道・ガス等の整備基準
- 極めて規模の大きい土地の場合は学校等との協議に関する事項
土地を一体として利用してマンションを建設する場合
- 1室あたりの最低面積(ワンルーム規制条例もあれば併せて確認します)
- 自動車駐車場やバイク置場・駐輪場等の設置基準
- 建物の共用部に関する事項(廊下等)
- 公園整備の基準
- 上下水道・ガス等の基準
両者共通の事項として
- 切土・盛土に関する基準
- 擁壁等の設置基準
等
これらの開発指導要綱が適用されるのは、開発行為に当たる場合です。
開発行為とは、「主として建築物の建築又は特定工作物の建設の用に供する目的で行う土地の区画形質の変更」のことを言い、開発行為に当たるかどうかはその他に土地の面積によっても変わってきます。
一定規模の面積以上の土地であれば開発行為に当たるとされますが、この基準以下の土地の場合で開発行為(例えば戸建住宅のミニ分譲を行うような場合)でも、開発指導要綱の基準に従うことが望ましいと考えられています(最低敷地面積の制限等は特に)。
そのため、地域によっても基準は異なりますがある程度以上の面積の土地を調査する場合は必ず開発指導要綱も確認しておきましょう。
開発指導要綱調査の際に覚えておきたいこと
開発指導要綱はかなり複雑に定められていて、慣れないうちははっきり言って読むのも嫌になることがあるでしょう。
自治体によって定め方は異なりますが、例えば
「新設道路の延長が35mまでは幅員5mでよいが、35mを超えると幅員6mにしなければならない」
「新設道路が既存の公道に通り抜けできる場合は自動車展開広場は必要ないが、行き止まりの場合は自動車展開広場を○○mごとに少なくとも1か所も受けなければならない」
等です。
通常こういったものを読み解いて実際に区画割の計画図やマンションの設計図を描くのは建築士やデベロッパーになると思いますが、ある程度のことは売買の際に理解しておく方が取引もよりスムーズになるでしょう。
そのため、開発指導要綱をもらったら、最低限以下のことを読んで疑問点はすぐ窓口で確認するようにします。
- 道路築造基準(幅員と展開広場の入れ方は?接続先の既存公道は幅員何m以上か?)
- 公園設置基準(土地面積が何㎡を超えるとどの程度の広さの公園を造らなければならないか?)
- 上下水道に関する基準(水道負担金の有無、工事の負担区分等)
- 開発負担金に関する事項
最低でも以上のことは確認するようにします。
開発指導要綱は複雑なので、電話ではなかなか答えてくれない場合もありますから、二度手間を防ぐためにも役所調査時にしっかり確認しておきましょう。
纏め
- 土地の面積が周辺の標準的な面積に比べて大きい場合、利用方法が特殊になる場合がある
- 買主がどのように土地を利用できるかの相談に乗るためにも、開発指導要綱の調査が必要になる
- 開発指導要綱の内容に疑問があれば、できれば役所調査時に質問して回答をもらっておく
・関連記事【宅建士にはこの記事も読まれています。】