値崩れしにくい土地を選ぶための3つのポイント

突然ですが、不動産業界における「2019年問題」をご存じでしょうか。

厚生労働省に設置された政策研究機関の国立社会保障・人口問題研究所は2013年、「日本の総世帯数は2019年にピークに達し、それ以後、減少の方向に向かう」という予測を発表しました。

世帯数が減るということは、不動産への需要も減るということです。これにより不動産価値が下がり、住宅市場は「縮小するマーケット」の時代に入っていくだろうというのが「2019年問題」です。

この問題だけでなく、社会情勢や人・物の動きなど様々な要因で不動産価格は上下します。中長期の投資を前提とする不動産投資では、できるだけその変化の影響を小さくしたいものです。

今回は、値崩れしにくい土地を選ぶ際のポイントについてお伝えしたいと思います。

鉄道路線をみる

地価が値崩れしにくいエリアを見分けるポイントの一つは鉄道路線です。

首都圏には、JR、地下鉄、東急、京急など多くの鉄道路線があり、網の目のように走っています。歴史を振り返っても、鉄道の敷設と不動産開発が切っても切れない関係にあることが分かります。

路線について調べると、その沿線の土地がどのようなものなのかが見えてきますので、ある程度土地の価値を推察することができます。

まず、都心へ直通で乗り入れている路線は利便性が高いので、住みやすく人気が高くなると言えます。例えば、東急東横線や東急田園都市線のような、ほぼ全車両が都心へ乗り入れしている路線の沿線は地価が下がりにくいと言えるでしょう。

また、その路線が「大きな」街や「成長する」街をつないでいたり、沿線に「人気の高い」街があったりすると、さらに地価は下がりにくくなります。

例えば、渋谷と横浜をつなぐ東急東横線では、公示地価(平成27年都道府県地価調査)を見ると、東京都の学芸大学や田園調布は他の私鉄路線の駅に比べ、高い地価水準をキープしながら上昇しています。

また、神奈川県では、副都心線やみなとみらい線と接続したことなどを背景に、終点の「横浜元町中華街」に近く、横浜市中区山下町の高級住宅地の地点は地価上昇率が1位に、日吉駅徒歩圏の住宅地は価格高位の地点に、さらに川崎市中原区の再開発が続く武蔵小杉は2015年に引き続き上昇しています。

都内だけでなく、同路線の神奈川県内のエリアで地価が上昇しているという事実は、鉄道路線と地価の関係性を端的に示しています。

また、異なる鉄道路線が利用可能で、なおかつ、急行停車駅が最寄りの土地は地価が下がりにくいという点で理想的です。おまけに徒歩10分圏内であればさらに値崩れしにくいでしょう。

都市計画をみる

各自治体による都市計画も、将来の土地価格の変動に影響を与えます。

例えば、2014年8月に施行された「都市再生特別措置法の一部改正法」には注意が必要です。これは、行政と住民や民間事業者が一体となってコンパクトなまちづくりをするために改正されました。背景は、大都市における高齢者の急増と地方都市における拡散した市街地での急激な人口減少問題です。

まず各市町村が「立地適性化計画」を作成し、その区域を決めます。その中に、緩やかに住民の居住エリアを誘導していく「居住誘導区域」を、さらにその中で、医療や福祉、商業施設を誘導していく「都市機能誘導区域」を決めます。そして、拠点間を結ぶ公共交通を充実させる、いわば広がった市街地を凝縮しようということです。

都市機能誘導区域には、国からの予算補助や金融上の支援措置がいろいろあります。気を付けなければならないのは、居住誘導区域=市街化区域ではないことです。

土地の特徴をみる

当たり前の事ですが、世の中にまったく同じ土地というものはありません。土地にはそれぞれ「個性」があります。「立地」という言い方で表現されることもあります。値崩れしにくい土地には、次のような3つの「特徴」があるといえます。

形状が整っている

整形された土地は用途も広く、土地の価値は安定しやすい傾向にあります。反対に整形でない土地、例えば凸凹のある土地や細長い土地、旗竿地や「路地状敷地」と呼ばれるL字型の土地などは、使いにくく、デメリットがある土地と評価されて、値引きされやすい傾向にあります。

幅4メートル以上の道路に接道されていること

都市部では建築基準法上、道路に2メートル以上接している土地には建物が建てられますが、最も条件が良いのは4メートル以上の道路に接している土地です。

一般に「2項道路」と呼ばれる幅員4メートル未満の道路に面する土地は、建物を新築する際に、敷地の一部を道路として提供しなくてはならないため、実際に利用できる面積が目減りしてしまうので注意が必要です。

また、前面道路は建築資材の搬入出や工事車両の出入りに使われ、その幅員は大型車両の乗り入れ可否により建築・解体コストにも影響します。

接する道路が私道である場合、道路に埋設された水道管や下水道管の維持管理に関して問題となる場合があるので、事前に調査した方がよいでしょう。

なお、東京都では建築安全条例により、特殊建築物(アパートなどを含む)は、最低4メートル以上道路に接していないと建築できません。裏を返せば、都内の新築マンションならば、このような心配はないということです。

地盤が良く傾斜地でないこと

特に、造成地については注意が必要です。従来あった斜面を削って(切土)造成した土地は問題ありませんが、土砂を入れた(盛土)土地は、地盤沈下が落ち着くまでに時間がかかります。

また、見晴らしの良さから傾斜地を好む方もいらっしゃいますが、高低差のある土地は、高齢者にとって、日常生活の負担が大きくなります。また、地盤を平坦にするため土留め(擁壁)が必要になれば、工事コストはもちろん、地震による擁壁破損や雨水の流入など、自然災害のリスクも高まります。

まとめ

賃貸収入を主とする不動産投資では、どうしても土地より建物を意識しがちです。建物の資産価値は、建て替えやリフォームで維持できますが、土地はそういうわけにいきません。投資用マンションにおいても、土地は資産価値を決める大きな要素です。
値崩れしない土地を選ぶ目を持つことは、あなたの資産形成に大いに役立つでしょう。