家電量販店が賃料減額交渉をする理由

個人投資家が投資をする物件は多くがマンションだと思いますが、小売店舗物件や飲食物件に投資をする方も多いと思います。

しかし、特に地方都市や地方圏で顕著ですが、景気が上向きになっているのにもかかわらず賃料減額交渉がケースが多く見られます。

なぜ、景気が良くなっているのに賃料減額がなされているのか、その理由で考えられるものをお話しします。

 小売店や飲食店の賃料支払いの元

借り手から見た場合、賃料支払の原資は原則として、その店舗から上がる売上高です。

簡単に図示すると、以下の通りです。

売上高 売上総利益
費用項目
仕入費用等
人件費等
賃料

 

物件の借り手であるテナントが支払える賃料は、その物件で上げられる売上高から商品の仕入費用や管理費、人件費等を除いた売上高のうちに含まれます。

つまり、テナントが支払える賃料は、仕入費用や人件費等がゼロとする現実的ではない仮定をしても、売上高の額が支払い能力の上限ということです。

このような考え方を賃料試算に応用したのが、不動産鑑定において賃料の試算に用いる一手法である収益分析法です。

収益分析法は、売上高にその業種における一般的な家賃負担率を乗じて試算します。

業種ごとの一般的な売上高に対する家賃負担率は、おおよそ以下の通りと言われています。(もちろん物件や業種、店舗運営の巧拙等によって差はありますし、実際の不動産鑑定においてはそれらを分析の上で適用する率を求めますので、参考程度の水準ですが)

  • 飲食店…上限10%程度、概ね7~8%
  • スーパーマーケット…5~7%
  • メガネ店など専門店…7~9%
  • 家電量販店…5~8%

つまり、売上高月額1億円の家電量販店で、適正な売上高に対する家賃負担率を6%と判定した場合、収益分析法による試算賃料は以下のように試算されます。

1億円×6%=6,000,000円

この方法は家賃負担率の査定が難しいこと、売上高のデータが入手できない場合もあるため、実際の鑑定評価では試算しても、最終的な適正賃料の判定の段階ではあまりウエイトを置かず、他の方法で求めた賃料から適正賃料を判定する場合も多いです。

しかし、テナントが支払える賃料は、その物件からテナントが得られる売上高から、ということは現実ですので、この考え方の理解をしていただきたいと思います。

地方の郊外店が賃料減額交渉をする理由

前段のように考えると、郊外型店舗が賃料の減額交渉をする理由の大きなものは、

「売上高が上がらず賃料の支払いが厳しいため」と考えられます。

では、なぜ地方の郊外店の売上高がなかなか上がらないケースが多いかということを考えてみましょう。

大きく分けて2つの原因があると言われています。

郊外にワンストップ型の大型店が進出して顧客が奪われているため

郊外店は大きく2つに分けられます。

1つ目は、国道や県道沿い等にシングルテナント型店舗が建ち並んでいる地域です。

これは、郊外に洋服店や飲食店、家電量販店等の、1つの建物に1つのテナントが入っている店舗(これをシングルテナント型店舗と言います)が入っている地域のことをイメージしてください。

その一方で、近年は郊外にイオン等の、スーパーマーケットや各種の専門店、シネマコンプレックス等も備えた大型複合商業施設が進出しています。

自動車で移動する顧客は、あちらの店で服を買い、こちらの店で食料品を買う、等のようにあちこちの駐車場に車を入れたり出したりする必要があるシングルテナント型の店舗が建ち並ぶ地域よりも、一度駐車場に車を入れてしまえば、その施設内で全ての買い物が終わらせられる複合型の商業施設を好むようになっています。

これは自宅からの距離が多少離れている場合でも当てはまるケースが多いようです。

シングルテナント型の郊外店は、こういった複合商業施設との顧客獲得競争に劣勢で、売上高が計画通りに上がっていない場合が多いようです。

消費者が実店舗で商品を購入しないケースが増えている

Offline To Online、略してO2Oという言葉を聞いたことがある方もいらっしゃると思います。

これは、消費者が実際の店舗では商品の現物を見るだけで、実際に商品を購入するのは、価格.COMやアマゾン、楽天等の通信販売サイトで最安値を検索して購入するという消費行動を言います。

通信販売サイトは日本中、世界中どこからでもアクセスでき、かつ価格情報もオープンになっていますから、どれを購入しても基本同じである規格品、例えば家電製品やかばん、靴等に関してはこういった商品行動が多くなっています。

そのため、郊外店でも、特に家電量販店や服飾店は、前述の複合大型店舗の他に全国的な販売網を持つ通信販売サイトも競合相手になっています。

通信販売サイトは極論店舗を持つ必要がないため、その分商品価格を下げることも可能です。

そういった面で、実店舗側では保証を厚くする、店員によるサービスやアフターフォローを厚くする等、新たなコスト増要因も抱えている店舗が多くなっています。

纏め

  • 店舗物件のテナントの賃料支払能力の原資は、売上高である
  • 地方都市や地方の郊外型店舗は、大型の複合商業施設やショッピングセンターとの顧客獲得競争が激化している
  • 消費者が実店舗では商品を確認するだけで、実際の購入は通信販売で、というO2Oと言われる消費行動が増えており、郊外型の電機店や服飾店等の競合となっている

 

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