公図は土地の境界や建物の位置を確定するための地図で、法務局に備え付けられています。
公図はその性質を十分理解した上で使うと土地の形等を確認する他、建物の敷地になっている土地の地番を推定するために非常に役立つものですが、その性質を理解しておかないと誤りをおかすこともあります。
公図とは何か
公図は大きく分けて2つに分けられます。
不動産登記法第14条第1項に規定する地図
これは旧来は「法17条地図」と呼ばれていたものです(2005年3月の不動産登記法改正までは第17条に規定されていたため)。
この地図は法務局に備え付けられている「公図」の中では最も精度の高いものですが、平成29年現在の整備状況を見た場合、これが備え付けられていない所の方が多くなっています。
それは、国家基準点(三角点)を基に、精度の高い機械を用いて測量を行い、更に関係権利者の立会や境界の確認が必要となるため整備が進んでいないこと等が理由として挙げられます。
公図を取得すると「分類」や「種類」が併記されますが、その分類欄に「地図(法第14条第1項)」として記載されます。
この分類に該当する図面としては、国土調査に基づいて作成された地籍図、土地区画整理等による所在図等が挙げられます。(公図の「種類」欄に記載されます)
不動産登記法第14条第4項に規定する地図に準ずる図面
この「地図に準ずる図面」も一応「公図」としては扱われますが、①のものよりも精度も信頼性も劣ります。
この分類のものには、地域にもよりますがそもそも縮尺が「縮尺不明」とされていたり、記載されている方位が明らかに誤っていたりするものも含まれています。
これに含まれる種類は旧土地台帳附属地図等があります。
公図の沿革
不動産取引の実務からはやや余談というか豆知識になってしまうかもしれませんが、このように「精度の高い公図」と「精度の低い公図」が混在している状況は、そもそも公図が作られたきっかけは何かということを知っておく必要があります。
公図の作成のきっかけは、明治6年まではるかに時代をさかのぼります。日本史が得意だった方は懐かしい用語が出てくるかもしれません(笑)。
この明治6年には、税金を納める形態がそれまでの米や地方特産品による「物納」から、お金での納付に代わるという、「地租改正」がありました。
この時の地租改正では、地価の3/100を地租(つまり税金)とするということが決められています。
この地租改正によって、それまで禁止されていた土地の売買が認められ、また税額の算出のために全国に所在する土地の所有者の確定や面積の調査、地価の調査が行われました。
このとき、面積の調査のためには測量が必要になります。この際の測量に当たっては年貢の賦課等のために江戸時代から存在していた検地帳を基に調査が行われたそうで、しかも、「土地の反別面積は所有者からその当時のありのままを申告し、それを検地帳と比較して相違なければそのまま採用、もし照合して付き合わなければ地引絵図(見取図程度のものです)を提出させる。ただし、申告面積が検地帳と比べて増加していれば申告のとおりとして実地検査を省き、減少している時だけ竿入調査をすることとした」
とされていました。
当然納税者である土地所有者にとってみれば、税額は1円でも低い方が良いわけです(笑)。
当然実際の面積よりも少なく申告する人が続出したものと考えられます。
また、当時の測量は現代のような専門家が行う精度の高いものではなく、素人に近い人が縄等を使って行ったことが分かっています。
明治新政府の事情で、この地租改正は早期に完了する必要があった事業でしたから、利害関係者であり、しかも測量の素人の自己申告による土地面積について、十分なチェックがなされなかったといわれています。
尚、現代に近い時期に分合筆されたものについては当然測量を入れますから比較的正しい面積を示しているものが多くなっていますが、土地の登記簿上の面積もこの時の測量を基に決められたものが多く、実際の面積と登記簿上の面積が異なっている場合があります。
登記簿上の面積>実測面積のことを縄縮みと言い、
登記簿上の面積<実測面積のことを縄伸びと言います。
これらの地租改正時に作成された図面を基に整備された旧土地台帳附属地図の信頼性は推して知るべきでしょう。
そのため、公図について完全に信頼するわけではなく、必ず現地との照合は必要になります。
実測図や地積測量図がある場合はそちらをメインに考える方が良いでしょう。
このような性質を持つ前段②の旧土地台帳附属地図等の、いわゆる法第14条図面ではないものであっても、「土地の形」と「隣接地番との関係」については概ね正確に実態を表しているものが多いと言われていますから、この点も併せて覚えておいて損はないでしょう。
尚、余談ですが、実測面積より登記面積が多い縄縮みは都会部で多いと言われています。
これは当時の売買の際に実測面積よりも大きい面積を申告して売買代金を高くするためにそのように申告した例が多いためです。
その他、縄縮みは田畑等で小作地として使われていた場合、小作料を多くとれば良いということで地主が土地面積を過大申告した際にも発生した例が多いと言われています。
私の経験では山林や林等、売買してもあまり高くない、またそこから上がる収益も明治当時の田や畑と違ってあまり大きい収益は期待できない種類の土地では現代においても縄伸び(実測面積<登記面積)しているケースが多いと感じています。
纏め
- 公図は大きく分けて2種類ある
- 法14条地図(旧来は法17条地図)は国土調査や土地区画整理事業等において精度の高い測量によって整備された地図で、比較的信頼性は高い
- 地図に準ずる図面は明治の地租改正の際に整備された図面が起源であり、当時の様々な事情を反映して精度は低め
- いずれにせよ公図は現地と十分照合の上利用する必要がある
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