※2019年7月更新
不動産を探している際、建築基準法に適合していない建物について耳にすることも多いかと思います。日本国内で建物を建築する場合は、建築基準法の最低基準を満たしていなければいけないと規定されています。今回は、その建築基準法に適合しない収益物件の3パターンをそれぞれご紹介します。
建築基準法不適合物件の3つのパターン
世の中にはこの基準を満たしていない収益物件が多数存在しています。
それは『違法建築物』『既存不適格建築物』『再建築不可物件』の3パターン。
それぞれ解説していきます。
違法建築物
違法建築物とは、法令に違反して建築された建物のことを指します。建築基準法では、次のような記載がなされています。
「建ぺい率や容積率の制限に違反したもの、敷地の接道義務に違反したもの、違法な増改築、用途変更を行ったものなど、建築基準法令の規定または法律の規定に違反した建築物は、違反建築物となる。特定行政庁は違反建築物の建築主や工事の請負人等に対して、当該工事の施工の停止を命じ、または相当の猶予期限をつけて、当該建築物の除却、移転、改築、使用禁止、使用制限等の措置をとることを命ずることができる。」
「このような物件になかなか出会わないのでは?」とは思うかもしれませんが、実際にはこのような違法建築物が数多く出回っています。
不動産の利回りを高くするために、より多くの部屋や店舗をつくることを考えるかと思いますが、建築基準法の「容積率」の制限により、建てられる建物が決まってしまっています。
例えば、マンションの1階部分を駐車場として役所に建築確認申請を出します。駐車場の面積は一定の範囲までは容積率に換算されませんので、通常であれば3階建てしか建築できない場所でも4階まで建築することができてしまうのです。
そして、正式に建築確認がおりて着工し、1階にこっそり事務所や店舗をつくることをしています。
そうすることで利回りは非常に良くなりますが、こうしてでき上がった建物は違法建築物となります。違法建築物の場合、基本的にはノンバンク系でしか融資がつかないことを覚悟する必要があります。
つまり、流通しにくい物件なので高利回りになっていますが、確実に出口が見込めるような物件を狙う以外になく、あくまでも投資上級者向きの収益物件だといえます。
違法建築物には容積率超過以外にも、
- 建ぺい率超過
- 斜線制限違反
- 用途制限違反
- 接道義務違反
- 無確認建築物
などがあります。
もちろん、物件概要書に「違法建築物」とは書かれておらず、「建ぺい率オーバー」、「容積率オーバー」といった表記になります。
また、検査済み証があればどのような不動産でも大丈夫だとは限りません。検査済み証の発行を受けたあとに違法に増改築しているケースもあるため、現場確認は必ず行い、未登記建屋や増改築した形跡を見つけて、売主に確認することが重要だといえます。
既存不適格建築物
既存不適格物件とは、建設当初は適法だったものの、その後法改正や指定変更などにより、現在では適法ではなくなった物件を指します。
建築基準法では、次のような記載がなされています。
「既存不適格建築物とは、建築したときには適法であった建築物が、その後の法改正や都市計画の変更等により、現在の建築基準法令の規定に適合しなくなったものをいう。既存不適格建築物は違反にはならず、原則としてそのままの状態で存在が認められる。ただし、一定規模を超える増・改築を行う場合には、不適格な状態を解消し、建築物全体が建築基準法令の規定に適合するようにする必要がある。」
つまり、ルール通り建築したのに、途中でルール自体が変わって違反になってしまった残念な物件です。
例えば以下の様な例が該当します。
- 用途地域や建ぺい率・容積率などの変更により規定数値を超過した。
- 都市計画道路が事業化され買収された結果敷地が減少し、建ぺい率・容積率が規定数値を超過した。
- 条例や指導要綱の内容が変更となったため、現在の規定には適さないと判断されているもの。
違法建築物と既存不適格建築物はどちらも再建築時に同規模の建物が建たないという点については同じですが、その悪質性はまったく違います。
そのため、現行の法令や条例等に照らすと適法ではない物件とでは大きな違いがあり、違反建築の場合は、金融機関から「住宅ローンを利用できない物件」と判断されるケースが多いです。
これは、法律に沿っていない物件を担保とすることや違法な物件について正確に価値を算出することが難しいためです。
既存不適格建築物については、もともと所有者には落ち度はないため、一定の規制の緩和をするという対応をしています。
再建築不可物件
再建築不可物件は、建物を取り壊して建て替えが出来ない物件の事を指します。
なぜ、再建築が出来ないのかと言うと、建築基準法第42条にその土地が抵触しているからです。建築基準法の道路とは、原則幅員が4m以上の道路の事をいいますが、特定行政庁が指定した4m未満の道路もこれに含まれます。再建築不可物件はこの42条に定められている道路に接していないのが原因と言われています。
また、道路が4m以上または特定行政庁が指定した道路に接していたとしても、間口が建築基準法上の道路に2m以上接していないと原則建て替えができません。これを接道義務といいます。
再建築不可物件の場合、今現状はとやかく言わないけれども、一度壊して建て直すなら、この要件を満たさなければ建物を建ててはいけないという状態になっているといえます。
違法建築物と既存不適格物件の多くは、容積率オーバー、建ぺい率オーバー、用途変更などが問題のケースが多く、建て替え時には少し小さくなるけど建築ができるケースが多いのですが、再建築不可物件は道路付の問題で建築できませんということで、価値はほとんどなくなってきます。
このため、再建築不可物件を購入するということは、たとえ土地付きだとしても、今の建物が老朽化して取り壊しになればそれで終わりです。
再度新しい建物を建てたいのであれば、接道要件を満たすために道路認定を受けるなど、かなりの苦労と手間が必要となります。このようなハードルがあるため、再建築不可物件を購入する場合は、銀行融資がつかない可能性が高くなります。
建築基準法不適合物件の3つのパターンまとめ
いかがでしたか?
『安いから』という理由でむやみに物件を探すのではなく、しっかりとその安い理由はなんなのかなどについて吟味する必要があります。
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