※2019年7月更新
土地に建物を建てる際は、地下階のない建物であっても基礎や杭を入れるためにある程度土地を掘ることになります。
そこで埋蔵文化財が発見された場合、その発掘調査が必要になりますから建物の建築は遅れます。
場合によっては調査費用を買主が負担しなければならないということもありますから、物件調査の際に埋蔵文化財調査は必ず行わなければなりません。
埋蔵文化財があるとどうなる?
埋蔵文化財については文化財保護法で規定されており、対象地が埋蔵文化財包蔵地として指定されているか、埋蔵文化財包蔵地の近接地か、埋蔵文化財包蔵地の指定がないかという3つの場合に分けられます。それぞれ解説します。
埋蔵文化財包蔵地の場合
すでに遺跡が発見されている土地のことを周知の埋蔵文化財包蔵地と呼びます。
遺跡が発見された場合、工事着工の60日前までに役所の担当窓口までに届け出なければなりません。この場合、役所は試掘による確認調査を行い遺跡があるかどうかを確認します。
遺跡があると分かれば発掘調査を実施して図面や写真によって記録した後に工事の施工許可が下りる場合もありますし、工事計画の見直しを要求されたり、中止させられたりする場合もあります。
埋蔵文化財包蔵地の近接地の場合
この場合は役所によって対応が異なります。
周知の埋蔵文化財包蔵地と同じような対応をされるところもあれば、工事中に埋蔵文化財を発見した場合はお知らせくださいと言われるところもあります。
埋蔵文化財包蔵地の指定がない場合
文化財保護法で規定されているのはあくまで「周知の埋蔵文化財包蔵地」ですから、指定がない土地であっても工事中に埋蔵文化財が出土した場合は届け出て役所の指示を受けなければなりません。
以上のとおり、埋蔵文化財が発見されると土地の買主にとっては建物の工事が遅れ、最悪の場合は予定通りの建物が建築できなくなってしまいますから重要な事項です。
そのため、調査に限界のある事項ではありますが調べられる限り調べておく必要があります。
埋蔵文化財調査の流れとその方法
埋蔵文化財の調査については、役所の担当課で周知の埋蔵文化財包蔵地か、もしくはその近接地の指定があるかといったことを質問します。
担当課は多くの場合教育委員会や生涯学習課等といったところですが、やはり役所ごとに名称は異なります。なのでそれぞれの担当課で確認することになります。
また、調査対象地の近隣で埋蔵文化財が出たことが判明しており、その地点で調査を行っていた場合は、役所でその地点の調査の概要を教えてもらえることもありますから確認しておきましょう。
ただし周知の埋蔵文化財包蔵地やその近接地の指定がないことを確認できても、埋蔵文化財は正直なところ「掘ってみなければわからない」ことでもありますから、絶対にないとは言い切れません。
例えば京都市や鎌倉市等は歴史的遺構が多い地域ですから、周知の埋蔵文化財包蔵地の指定がなくても、掘ってみると遺跡が新しく発見されるといったこともあるようです。そのため、一部のマンションデベロッパーはこれらの地域に新築するのを躊躇するといった事例もあります。
宅建士や不動産業に関わる人は要注意!
有史以来歴史的に中心地だった地域でなくても、例えば縄文時代や弥生時代といったより古い時代の遺跡が発見されるようなこともありますので、絶対に遺跡がないと言い切れないのが難しいところではありますが、少なくとも不動産業にかかわるのであれば、売主・買主に向けてできる範囲の調査責任は果たしておくべきです。
実際、周知の埋蔵文化財包蔵地に当たるか否かの調査にかかる時間は本当にわずかですから、手を抜かないようにしましょう。
まとめ
- 埋蔵文化財が出土すると建築に大きな支障が出る
- 埋蔵文化財はその性質上掘ってみなければ「ない」とは言い切れない
- できる限りの調査にかかる時間はわずかであるので、手を抜かず確認しておくべき